2011/03/30

3/23~29の放射線測定結果を公開します

突然ですが放射線も電磁波(電波)の一種ということで私、よしお所有のガイガーカウンター(放射線をはかる機械)でここ1週間計測した放射線測定結果を公表します。

+++ 放射線測定結果(2011/3/23-29、東京都内) +++
日付カウント数/分
3/232.92
3/242.64
3/252.48
3/262.46
3/272.45
3/282.36
3/292.37

測定は12時間以上ガイガーカウンターを作動させ、その結果を毎分当たりの数で平均しました。それが上の表の結果です。

今回放射線測定に使ったのはすでに絶版となっている、今から10数年前にA電子通商(当時の発売元への問い合わせを遠慮いただくため敢えて伏字とします)で発売されていたガイガーカウンタキット(通常版)を組み立てたものです。
放射線測定器のセンサーはGM計数管です。センサーに1回入る高エネルギーβ(ベーター)線またはγ(ガンマ)線を1カウントとして上の表にしました。高感度ではないためアルファー線は測定対象外となっており、「マイクロシーベルト」「ミリシーベルト」というような測定値でもないことをお知らせします。

大震災が発生する前の通常の測定値はおよそ毎分2カウント前後でしたから3/23時点、つまり雨が降った翌日の放射線量、β線またはγ線が少なくとも通常の1.5倍程度になったことが分かりました。主要メディアの報道による測定結果は通常の数十倍以上ということでしたが恐らく所有しているガイガーカウンターが測定できないアルファー線も含めた値であることが考えられそうです。

個人で測定した結果ではここ1週間の間に放射線量が減り通常値に戻りつつあることが分かりましたので少々安堵しています。
放射線は電波と同じように目に見えず測定器が広帯域受信機(下注釈参照)よりも高価ですからなかなか測る機会がありません。しかし幸か不幸か、私よしおの手元には過去に電子工作で組み立てたガイガーカウンターがあったので今回このように放射線測定結果を公開できました。まさか活用する日がこれほど早く来るとは思いませんでしたが最近の都内の放射線量に不安をお持ちの方のご参考になればと思います。


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[言葉の説明]
・広帯域受信機とは:テレビ・ラジオ放送以外(電車や飛行機、電車、防災放送で使われている無線やトランシーバー)の電波が分かる機械。ワイドレシーバー、ワイドバンドレシーバーとも言う

2011/03/28

スタン/キルとは - 無線機用語

今回は普段お目に掛からない機能、"スタン" "キル"を少しだけ掘り下げてみます。

"スタン"は日本語で「気絶させる」という意味があります。高電圧を発する"スタンガン"の"スタン"と同じ意味です。無線機用語の"スタン"は特定のコードを受信したとき、その無線機がそれ以降使えなくする機能です。"キル"は無線機を完全に使えなくする、または初期化する機能です。これらの操作に使う特定のコードは2種類または5種類の音の組み合わせで実現する場合が多いようです。
反対の動作として"リバイブ"があります。これはお察しのとおり"スタン"で使用不能となった無線機を再び使えるようにする機能です。

"スタン"機能の使い方としては無線機が盗難・紛失に遭った場合、周波数や設定など無線情報を他人に知られないようにする場合有効です。もっとも、個人で使うことはまずないでしょう。

2011/03/26

日本の地震速報システムに絶賛の声

直接電波に関連する内容ではありませんがアメリカから今回の東北・関東(東日本)大震災について、被災前の初期行動の迅速さに関心を示した話題を見つけましたので紹介します。

Japan's Earthquake Warning System Triggers Wake-Up Call For California  KPBS.org(英文)

この記事によると日本の地震速報システムは世界で最も進んでいることからカリフォルニア州でも今年このシステムを導入し、日本の地震速報システム同様破壊力のあるS波が来る前に地震計のデータ転送が可能であり、今後システムが本格運用を開始すれば地震時の市民の安全が確保できるとアピールしています。
記事の最後で"カリフォルニア州に導入された15億ドルの地震速報システムは今年試験運用開始された。だが(同時にこのシステムは)米国政府の財政を揺るがしている"とジョークを交えた締めくくりはさすがアメリカらしいと言えます(補足:カリフォルニア州が地震速報システムに力を入れる理由は過去にロサンゼルス地震などを引き起こしたサンアンドレアス断層が同州付近に横たわっているためです)。
国内では引き続き地震の爪あとの深さを物語る報道が続いていますが、アメリカから「首都圏で地震による被害を最小限に抑えられたのが地震速報システムによるものであった」とジョークを交じえて伝えられたことは多少不謹慎であるかもしれません。ですが首都圏の建物損壊や人的被害が予想以上に少なかった現状と日本の地震速報システムがアメリカで採用された事実から明らかなとおり、少なくとも地震速報システムは日本が世界に誇れるものと考えて間違いないはずです。

今回の地震による直接的な被害がほとんどなかった首都圏でも依然として人々の地震への精神的不安は相当なものと思います。しかし冷静になれば別の見方もあるということで今回このアメリカのニュースを取り上げました。このように視点を変えれば必要以上の不安も和らぐと思いますがいかがでしょうか。

2011/03/25

ケンウッド、被災地に簡易無線を送る

先日無線機メーカー各社から今回の東北・関東(東日本)大震災への対応について少々まとめましたがケンウッドも被災地へ自社製品を送るとの情報が入ってきました。

この記事を作成している時点でケンウッドの公式ホームページに本内容の掲載はありませんが情報筋によると簡易無線機200台を被災地へ送るそうです。
他にもサムスングループが被災地へ携帯電話などを含め6億円相当の支援を決定したとのことです。

少々不謹慎ではあるかもしれませんが個人的には携帯電話回線が寸断された被災地で無線機が活躍する様子を想像するだけでも鳥肌が立つほどです。今回の大地震を教訓に国内で基地局がダウンしても通信できる無線機・アマチュア無線への認知度が上がること、そして災害時でも使える無線ネットワーク整備に政府がこれまで以上の関心を示すことに期待しましょう。
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[関連記事]
各無線機メーカーが大震災対応状況を発表

2011/03/24

Vスタンダード、中継対応特小トランシーバー

予想もしていなかったタイミングでバーテックススタンダードから新機種の発表です。

通信エリアと利用用途を拡げる、特定小電力トランシーバ FTH-80/株式会社バーテックススタンダード

同じルックスを持つモトローラブランドのMS80との違いは発売中のFTH-50と同様にリチウムイオン充電池と充電器の付属を廃し、代わりに市販の乾電池使用重視として見かけ上のコストを抑えた点とSTANDARDブランドかMOTOROLAブランドの違いくらいです。

単3乾電池使用メインのモデルとして発売されたこのFTH-80ですが単3乾電池では音声出力がリチウムイオン電池使用時の半分(200mW)しか得られないことに注意が必要です。この点はFTH-50とMS50の違いでも同様のことが言えます。200mWと400mWでは業務で使用経験がある方には自明の理ですが圧倒的な通話明瞭度の違いがあります。

日常それほど使わないけれどスペック上レピーター(中継器)対応の47チャンネル実装されたものが欲しいというユーザーにはこのFTH-80をお勧めできますがヘビーユーザーには間違いなくMS80が用途に適していると思います。またFTH-50と同様、市販の単3型充電池での使用も想定されていない可能性がありますのでこの辺りの注意も必要です。

通話距離が上級機種と比べ少しばかり短いものの、大音量で中継通話も可能、しかも単3電池が2本で使え何よりも安価なモデルはこの記事を書いている現在、このFTH-80以外にはないはずです(他メーカーの安価な製品の多くは電池が3本必要)。もっとも中継通話対応で単3電池が1本だけで使えるFTH-107FTH-108FTH-208HX808DSという機種もあります。大音量が必要ない場合はこちらの機種も候補に入るでしょう。


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[関連記事]
Vスタンダード、特小トランシーバー FTH-50発表

2011/03/22

ケンウッド、海外向け業務用ハンディ無線機

少々前の情報ですがケンウッドからトランシーバーの新機種が発表されました。

海外向け業務用デジタル無線システム「NEXEDGE®」シリーズにポータブル機新商品NX-220/320を追加

NEXEDGEとはケンウッドとアイコムが提唱するNXDN方式の、デジタル通信機能を持つ端末で、ケンウッドのNEXEDGEシリーズの無線機はこれまでのアナログ方式の無線機とNXDN方式のデジタル無線機の両方と交信可能なのが特徴です。同一周波数でデジタル・アナログ混在という運用スタイルも可能とのことです。

今回発表された新型トランシーバーはなぜか日本向けではなく海外向けなのが惜しいところです。海外で発売中の現行機種NX-200/300と今回発表されたNX-220/320の違いはデザイン以外わかりづらいですが、少なくとも防水性能が異なります。したがってNX-220/320は現行品の普及版と思われ上記報道資料の内容と合致します。蛇足ですが200と300、220と320の型番による区別は200番台がVHF帯仕様で300番台がUHF帯仕様をあらわします。

NXDNって何という疑問を持たれるでしょうが詳細は別の機会に譲るとして、イメージ的には国内で普及し始めている350MHz帯を使用する登録局デジタルトランシーバーの機能が網羅されていると考えてほぼ間違いないようです。

個人的にはどちらかというとNX-200/300よりもNX-220/320のデザインが好みですが業務用無線機はルックスよりも使い勝手や導入コストで決まるはずです。たとえコスト重視でNX-220/320を選んだとしても日常的に警備や屋内などで使用する用途であればまず問題ないと思われます。
このNX-220とNX-320、国内で発売されないのが気になりますが恐らく市場が整っておらずネットワーク型の無線網への市場価値が海外よりもそれほど高くないためと個人的には解釈しています。

2011/03/20

停電で気づいたこと、WiMAXがつながらない!?

東北・関東(東日本)大震災から1週間経った現在、都内では相変わらず米やパン、インスタントラーメンといった炭水化物をはじめ、電池や懐中電灯、ラジオといった普段はそれほど使わないものの入手困難な状況が続いています。恐らくこの記事をお読みの方はラジオや懐中電灯などを常備されている方が大半で今回の大地震が起きたときもそれほど慌てることは少なかったと思います。

さて、とうとう私よしおが住む地域でも計画停電が開始されましたので停電中の状況、特に通信状況の変化について気づいた点をいくつかお話させていただきます。
まず今回の停電に備えあらかじめ以下のような準備をしてみました。今回の計画停電は夕方から夜に掛けて行われるとのことでしたので主に
 - 電子レンジを使う食事は早めに調理
 - 電池駆動のラジオ、明かり、携帯電話、無線機、電動自転車の準備
 - PCとルーター用電源の確保
を行いました。そうこうしているうちに停電が始まりました。

真っ先に行ったのはラジオの電源投入。ラジオは正常に動作しています。次にトランシーバー回線の確認です。手持ちの無線機で周辺の仲間と無事連絡を取り合えました。
携帯電話は停電中も電波が入っています。メールや電話は通信規制が行われることを感じることなく正常に使えました。どうやら基地局の予備電源が正常に動作しているようです。最後にインターネットを使ってみました。しかし手持ちのWiMAXルーターの電源は入るものの基地局の電波をつかむことができませんでした。どうやらWiMAXの基地局には予備電源が備わっていないようです。補足ですがガスは使えました。水は出方が少なかったです。

以上のように、よしおの環境では停電中インターネット環境と水以外はそれほど支障ありませんでした。WiMAXの基地局がダウンしたのは少々驚きましたが低コストのフェムトセルが流行の昨今では仕方ないのかもしれません。携帯電話サービス会社の通信網がこういった非常時に強いのは確かなようです。この状況を理解したうえで次回の停電発生に向けて備えることにします。


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[関連記事]
卓上ライトの製作~輪番停電に向けて
各無線機メーカーが大震災対応状況を発表

2011/03/18

総務省、非常時のアマチュア無線運用緩和へ

先日発生した大地震でますますその重要性が期待できるアマチュア無線ですがその非常運用に関する各人から出された意見に対する総務省の答申がありました。

総務省|非常時におけるアマチュア局の運用規制の緩和に関する告示改正案に係る意見募集の結果

報道資料にもありますがこの運用緩和はあくまでも「社団であるアマチュア局に限り」との条件があり個人を主に対象とするものではないようです。こちらにあるとおり、出された意見はよくぞここまで調べ上げ考え抜いたものと感服するものもありますが社団のアマチュア局に関する内容であることが繰り返し回答されているのも目につきます。

確かに普段無線機を使わない方が災害時すぐに使えるかを考えると個人に対する運用緩和は道のりが険しい面もあると思います。しかしあえて日本もアメリカなどのようにパブリック・セーフティ無線のような制度をつくり社会的価値を整備する方法もありましょう。

意見は様々ですが日本ではインターネットや電話回線が不通となったときの連絡手段が一般人にはほとんどないに等しいことから、個人レベルの非常通信制度の見直しを進めることは必要と思います。ただこれを行うには同時に社会基盤の整備を進め認知度を上げることも必要です。理由としては今回の地震で災害用伝言ダイヤルやWeb掲示板などを実際どのように使うのか認知されていない実態が浮き彫りになったと感じたからです。

新しい制度の策定は必要です。今回の日本全土をまさに震撼させた大地震で政府や人々の非常時への考え方も少しは変わったはずです。しかしまずは現存する、手の届くサービス認知度向上が現実的と個人的には考えます。いかがでしょうか。

2011/03/16

各無線機メーカーが大震災対応状況を発表

今回の東日本(東北・関東)大震災後、まだ余震が続く中続々と無線機メーカーから大震災による被害状況や社会貢献が発表されています。
アイコムのWebサイトでは被災地への無線機無償提供について発表がありました。
東北地方太平洋沖地震への活動支援として、無線通信機600台などを無償提供|プレスリリースアイコム株式会社

600台というのは非常に膨大な数です。しかも充電池や充電器もあわせてすぐに使ってもらえるようにという暖かい配慮が伺えます。
バーテックススタンダードは同社福島県の工場が被災した旨について触れています。

『東北地方太平洋沖地震について』(pdf)

全社員無事とのことで安心しました。ただ今後の原発事故の影響が気になります。
なおケンウッドからは3/16現在詳しい発表はまだですが災害へのお見舞いが同社トップページに掲載されています。

被災地では通信網が寸断され外部と連絡する手段がないとラジオなどで被災者の訴えている様子がたびたび報道されています。無線機が人々の心の支えになれば私たち無線ファンはもとより無線機メーカーの方々も非常にうれしく思われることでしょう。

2011/03/15

卓上ライトの製作~輪番停電に向けて

発生から5日目を迎えてもなおその爪あとを残す東日本(東北・関東)大地震。その影響は首都圏からインスタントラーメン、米、パン、水、卵、電池といった食料品・日用品の蒸発に始まりついに計画停電にまで発展しました。

計画停電が昼間実施された場合、屋内でも太陽光で視界は建物によってはそれなりに確保できますが夜間に行われるとたとえラジオ・広帯域受信機などが備わっていたとしても少なからずこれまでの生活を変える必要性が出てしまいます。やはり電気、特に明かりは生活になくてはならないものです。ところが現在電気屋さんに行っても懐中電灯も電池も全部売り切れで在庫がありません。だったら明かりを作ってしまおう!ということで身近な材料を使い、急いで応急用卓上ライト(デスクライト)を作りました。


今回応急的に製作した卓上ライトは本が読める程度の明るさで停電する間の4時間、ほぼフルパワーかつ充電池専用で使えることを目的に作りました。製作時間はあれこれ材料をかき集め組み合わせた時間を含め3時間程度でした。実際に本が読める明るさを確保できたので参考までにその材料と手順を簡単にご紹介いたします。

用意する主な材料はこちら
 - 市販の単3充電池(2000mAh程度の容量を持つもの)...4本
 - 単3電池が4本入る電池ケース(写真右下の黒いもの)
 - スイッチ(比較的電流を流せるもの)...1個
 - 白色LED(型番:OSPW5161)...5個
 - 1/4W抵抗 16Ω(OSPW5161を使う場合)...5本
 - 卓上ライトの台座となる箱など...1個
 - 卓上ライトの支柱となる棒...2本

です。充電地を充電する充電器も入手できれば充電池が繰り返し使えます。
白色LEDは秋月電子通商で過去に買ったものを使いました。このOSPW5161という白色LEDは他の白色LEDと比べ広く照らせるようですから今回作る卓上ライトには最適と思います。
卓上ライトの台座は手近にあった厚紙製の箱を、卓上ライトの支柱にはうちわの柄とわりばしを組み合わせました。
抵抗は16Ωが手元になかったため1/6W51Ωの抵抗を3本並列に組み合わせ約17Ωとしています。なお使う電池・白色LEDによって抵抗の値は変化します(計算の仕方はこちらが便利と思います)。


各部を見ていきましょう。まずはスイッチ周辺から。

使用した白色LEDに流れる電流は1個あたり75mAを想定していますのでそれなりの電流が流せるスイッチを上の写真のように半田付けしました。


LEDを固定するアーム(わりばし)周辺の様子です。

リード線の被覆だけをところどころ切り取りLEDのカソード(-)側と直接半田付けしています。わりばしとLEDの間を若干離している理由はLEDの出す“熱”がわりばしに悪さしないようにするためです。このように白色LEDを取り付けても白色LEDの後ろから回り込む、直接目に入る光はそれほど多くなく、これなら読書などにほとんど支障がないだろうと思いました。


3本組み合わせた17Ω抵抗はご覧のように各白色LEDのアノード(+)側に半田付けしました。
上の写真ではカソード(-)側の足がまだとげとげしい状態ですが完成したものは手などに刺さらないようカットしています。


完成した卓上ライトの全体写真と動作中の様子です。写真ではめちゃめちゃ明るいように見えますが実際はハレーションもなく読書や小さな作業ができる程度の、それほど目に負担がかからない明るさです。この白色LEDでしたら5個で十分でしょう。写真右手前の半田ごては大きさ比較用です。

卓上ライトの支柱となるわりばしとうちわの柄のつなぎ目は針金でぐるぐる巻きにしているだけです。うちわの柄を使った理由は写真のように卓上ライトの台座に安定して固定できるからです。うちわの柄と台座の箱はプラスチック用接着剤で接着しています。また電極が露出している部分にも接着剤を適量塗り金属によるショートが極力起こらない工夫をしました。急いで作ったものですからデザインよりも実用重視となっています。


今回の地震による混乱で懐中電灯が買えなかった方にこの卓上ライトの製作例が役に立てばと思います。ただし何しろ応急的に作った卓上ライトですからまだ本格的に使っていません。普通はしないような、充電池の性能を出し切る設計ですから乾電池を使う場合は抵抗をもっと大きいものにする必要があります。あくまでこんなこともできるといった参考程度にとどめていただければと思います。

2011/03/14

NTTドコモ、SIMロック解除開始を発表

当初の情報よりも早いですが来るべき日が来るべくしてついに、といったところでしょうか。

報道発表資料  SIMロック解除の開始について  お知らせ  NTTドコモ

この報道資料には
1) NTTドコモから発売された端末を他社の回線で使う場合
2) 他社が発売した端末をNTTドコモの回線で使う場合
という2点が盛り込まれています。


SIMロック解除の説明にあてはまるのはこのうち
> 1) NTTドコモから発売された端末を他社の回線で使う場合
です。SIMロック解除は来月(4月)1日から発売される端末に対して、要求があれば原則SIMロック解除に応じるとのこと。つまり要求しなければSIMロックは解除されません。また4月1日以前に発売された端末はSIMロック解除対象外、なのでしょう。

この報道資料を見る限りNTTドコモの端末をSIMロック解除する前とした後のサービスは料金共に変化はないようですが、資料中「SIMロック解除後に再度SIMロックを設定することはできませんので、あらかじめご了承願います。」の文章が気になります。SIMロック解除後に端末が故障した場合の修理額がSIMロック解除前より上がる可能性もあり得ます。


さて次の
> 2) 他社が発売した端末をNTTドコモの回線で使う場合
について読み解いてみます。現状au端末はNTTドコモやソフトバンクの回線では使えないことから他社が発売した端末はすなわちソフトバンクの端末を指します。
この場合に問題となる点は大きくNTTドコモの独自サービスが受けられない可能性と他社端末がNTTドコモのサービスとの相性がよくないとき利用料が高額になる可能性が挙げられます。

SIMカードのみで回線契約する場合、店頭ではこの点について同意を求められるはずです。「ドコモでは他社のSIMカードを挿入して、利用される場合について、原則、動作確認などを実施しておらず、一切の動作保証を行いません。」という、NTTドコモの回線で他社の端末を使ったときの故障をNTTドコモは関知しない点にも注意が必要です。


最後に少々火種となる内容をはらんでいますが技術基準適合証明に関する宿題にあえて触れます。それは報道資料中にある「技適マークが付いていない他社携帯電話機のご使用は、電波法違反になるため、ドコモのネットワークへの接続をお断りする場合があります。」という曖昧な文章です。
海外での使用を主な目的とした携帯電話無線機を指しているでしょうが総務省のこちらのページによると「技適マークが付いていない無線機は、「免許を受けられない/違法になる」恐れがあります」というまたもや曖昧な説明があります。
これは渡航者が持っている携帯電話無線機を日本で使用するなどの事例に配慮していることが考えられます。世界的規模で携帯電話無線機の所有が浸透しつつある現代。外国からわざわざ来られた観光客や大統領、親善大使、はたまた海外中心で活躍されている日本人などが出国前に使い慣れた端末を手放し日本の携帯電話サービス事業者のお店にわざわざ出向き契約し端末購入しなければならない・・・といった状況は日本の携帯電話サービス事業者、日本政府、そして外国からの渡航者、どの立場に立ったとしてもまず経済面で非現実的と思いますからこの配慮はまあ納得できます。

アメリカはFCC、欧州はCEなど、電波に関連する認定は各国ばらばらのため現状グレーゾーンといわれるはっきりしない事情については各国の周波数共通化も含め今後総務省が改革すべき宿題でもあります。この件についてはこちらの報道資料にもあるとおり現在総務省が各国の状況を確認しながら鋭意検討中ですからいずれ解決することでしょう。
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[関連記事]
ドコモ、SIMフリー端末を発売予定

[参考資料]
総務省|MRA国際ワークショップの開催

2011/03/12

米HARRIS、LTEとP25の接続実証実験

昨日宮城県沖で発生したマグニチュード8.8の日本観測至上最大の地震、皆さんケガなどはありませんでしたか? 私は机の下に隠れるほど強い地震に遭ったのは初めてで、普段持ち歩いているラジオが大活躍しました。
それにしても震度7強と断続する余震にもかかわらず携帯電話回線が耐えられたことに正直驚いています。日本の通信インフラの堅牢さをあらためて知った次第です。

さて本題、主に官公庁・軍向けの無線機器を開発しているアメリカのHARRIS社はテキサス州ダラス周辺にあるDFW国際空港にてネットワーク大手ノキア・シーメンスのLTE回線とAPCO P25無線ネットワークを接続する同社のソリューション「VIDA」を使い実証実験を行うと発表しました。

Harris Corporation and Nokia Siemens Networks Demonstrate LTE Broadband Breakthrough at DFW International Airport(英文)

本記事にてたびたび取り上げますがアメリカには「パブリック・セーフティ」という治安維持の市民協力を目的とした無線ネットワークが古くから存在しており、FCC(連邦通信委員会)はアナログテレビ放送が終了した後の帯域700~800MHzにAPCO P25を採用した通信方式のナローバンド規格とLTEを採用したブロードバンド規格の2種類を定めています。

なぜトランシーバーを使った無線回線とLTEがドッキングしているのかについてはこちらの記事を参照いただくとして、今回HARRIS社はそのナローバンドとブロードバンドそしてインターネット回線を相互に接続するソリューションをDFW国際空港内で実証実験すると発表しました。

ニュースを簡単に説明しますと「無線機を使った音声通話をLTE回線間でやり取りが可能となる技術を空港で実験する」といったところです。この実験で採用された「VIDA LTE」はこれまでトランシーバー間でしか行えなかったやり取りをLTE回線を介して通信できる技術ですからインターネットが使えない有事の際にLTE回線網が生きていれば衛星を使うことなく数百キロ離れた地域との交信が可能となったり、LTEに対応したスマートフォンとAPCO P25のトランシーバーとのやり取りも可能となる技術です。

実験ではAPCO P25通信網とLTE通信網の間で既存のLTE回線の通信に支障をきたすことなく交信が可能なことを証明するために行われるようですがDFW国際空港のLTE回線にはすでに監視カメラ通信網が整っていることから、これらのビデオ映像転送を妨げることなく無線交信が成立するかが実験の重要なポイントとなるようでハードルは高いと思われます。

この実証実験が成功すればHARRIS社の「VIDA」技術の優秀さが証明されることでしょう。
アメリカのパブリック・セーフティでは今後既存のP25を使った無線通信回線とLTEはまったく別物として扱われるのではとこれまで解釈していましたがすでに両者の融合は始まりつつあるようで心配は杞憂に終わりそうです。


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[関連記事]
パブリック・セーフティの通信規格がLTE!?

2011/03/10

ラジオ局同士の合併、ついに解禁へ

総務省からマスメディア集中排除原則を覆す取り決めが公表されました。

放送法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令等の整備に関する意見募集

難しい内容ですが一言で表すと「1つの会社が最大4つのラジオ放送チャンネルを持てる」ということです。現行の規則ではマスメディア集中排除原則により1社1局が原則ですがこれにより同じ会社が複数のラジオ番組を放送できるようになります。

それ以外に気になる内容としては今回総務省の省令案(別紙1)によりますとこれまでの放送局という基準を見直すべく放送をハード(放送電波を出す)とソフト(番組を放送する)という2区分に分離し放送の参入容易化を図る点が挙げられます。恐らくこれは2013年にサービス開始予定のデジタルラジオ(VHFハイバンドのマルチメディア)放送やV-Lowマルチメディア放送事業に各社が参入しやすくするための制度改正が含まれていると推察できます。

ここ最近放送局が消えるニュースなどもあり、このままではラジオが消えてなくなるのではという不安も少なからずありましたが今回の制度改正によってその可能性に歯止めがかかりそうです。

マスメディアの集中排除原則一部廃止に関してはどの放送局もほとんど同じニュースを流す現在の状況やインターネットが普及している現在、政府や企業などが度を過ぎた表現規制をしない限り情報がそこそこ多様である観点からそれほど問題にはならないと個人的には解釈しています。

2011/03/08

ソフトバンク、LTE実験を開始

ついにソフトバンクもLTE(Long Term Evolution)の実験開始を発表しました。

800MHz帯におけるLTEシステムの実証実験を開始

実証実験ということですから実用化はそう遠くはないと考えてよいでしょう。タイトルは800MHzとなっていますが実際には2.1GHzもあわせて行われているようで800MHzと2.1GHzの電波伝播特性の違いを実験するそうです。
実験するLTEはLTEでも同社が提唱する複数基地局協調伝送方式「ECO-LTE」技術を実証するとのことです。これは4Gに向けたLTE-Advanced技術の実証実験を暗示していると考えられます。

気になる転がもう一つ。ソフトバンクはこれまで1.5GHzと2.1GHz帯の周波数を使用し800MHzを使用することはありませんでした。それは携帯電話サービス事業で先行していたNTTドコモとauがアナログ方式であった約20年前から帯域を使用しておりソフトバンク(旧デジタルホン)の入り込む余地がなかったためです。
今回の800MHz帯での実証実験開始はUHF帯のアナログテレビ放送終了と800MHz帯のワイヤレスマイク周波数移行後の帯域参入をもくろんでの行動でしょう。800MHz帯電波伝播の優位性を語るこれまでのソフトバンクの発言からこの帯域をソフトバンクが使用する可能性は濃厚となってきました。

国内のLTE関連の動向としては先日NTTドコモからのLTE-Advanced実験開始が記憶に新しいですがソフトバンクも負けてはいないようです。残るはKDDIとなりますが果たしてどのようなアピールを仕掛けてくるのか期待してしまいます。

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[関連記事]
ドコモ、LTE-Advanced予備免許を取得

2011/03/06

韓国の電気街を散策

数日ほどお隣の国、韓国へ旅行に行ってきました。電気街散策をはじめDMZ(非武装地帯)にある板門店の観光や実弾射撃といった国内では滅多にできないことも体験しました。この場では私よしおが体感した韓国の電気街を少しだけですが紹介します。



韓国にも電気街が複数あるようですがよしおが訪問した電気街は東京の秋葉原と比べても遜色のないくらい大きな規模です。人出は少なくないのですがどうも「にぎやか」という言葉がこの街にはしっくりきません。恐らく20年前の秋葉原にタイムスリップしたかのようなどっしりとした趣があるからでしょう。

今回訪れた電気街で現在販売されている商品の主流はパソコンです。デスクトップタイプのパソコンが圧倒的で中国製、台湾製のものが多くありました。建物の奥へ足を運ぶと店の通路で人が実際にドライバーやオシロスコープを使いパソコンを組み立て・調整している様子を見かけることが多く、手づくりの温かさが伝わってきました。



興味を引くところの通信関連製品の販売事情はどちらかというとパソコンよりも控えめな印象です。視点が偏っている理由もあるでしょうが携帯電話もそれほど見かけませんでした。無線関連製品を販売するお店はだいたい電子部品や監視カメラなど防犯装置もあわせて売っていました。

実際にお店に入りましたが驚いたことに違和感はほとんどありません。国が違ってもお店の雰囲気に同じ居心地の良さが感じられるのはうれしいものです。お店の人と少しだけ話したところ、人によると思いますが韓国の無線ショップの方の気風は他のアジアの方と比べ日本人の感覚と共通する点が少なくなく、非常に親しみが持てる印象でした。



撮影も忘れ電気街散策に奔走してしまい少々薄暗い写真だけしかありませんが全体的に韓国の電気街は“分かる人”には買い物しやすい場所ですし1日散策するだけでも面白いと思います。もっとも、電気街が秋葉原並みの規模ですからじっくり回ろうとすると1日では難しいでしょう。


まるで昔にタイムスリップしたかのような雰囲気を持つ韓国の電気街。日本では今後お目にかかれそうにない、そしてどこか懐かしさがこみ上げてくる空気がこの街にはありました。

2011/03/01

TETRAとは・・・

国内ではあまり耳(目)にしないと思いますが海外のサイトを横断しているとたまにこの用語が目につきます。ということで今日はTETRAについて少しだけ確かめてみましょう。

TETRAはTErrestrial Trunked RAdioの略で 欧州のETSIが定めたデジタル通信規格の一つです。熱帯魚ではありません(一応念のため)。先日こちらの記事で取り上げましたdPMRのようなものと同じイメージでいいでしょう。

具体的には1キャリアあたりの占有周波数帯域が25kHzで時分割多重方式のQPSKという、第2世代携帯電話サービスのmovaと同じ通信方式を使用しています。音声の伝送方式もmovaや海外で一般的なGSMと同じボコーダー(音声をそれに近い波形に当てはめて符号・復号する)方式を使用し、ショートメッセージ機能や低速データ通信機能もサポートしています。

TETRAは基本的には携帯電話と同じように基地局と携帯局で通信しますが携帯電話と異なる点として同時通話以外にも従来のトランシーバーのような1対1、1対複数の通信ができたり基地局がダウンした場合でも携帯局同士で通信できる機能があります。またTETRA独自の暗号化通信にも対応しているそうです。
無線機ですから通話料はもちろん無料です。無線機固有機能依存解消の目的でJavaを採用しています。

このTETRAは欧州をはじめ中国、インドネシア、アフリカ、イスラエルなどの警察や安全サービスなどですでに活用されているそうです。現状国内でTETRAは採用されておらず、日本のメーカーもTETRAアソシエーションに賛同していないようですから個人でTETRAに対応した端末を入手するのは困難でしょう。
実際に使ってみなければ何とも言えませんが第2世代携帯電話と同じ数kbpsの伝送レートですから音声遅延の懸念も含め、個人的に通話品質はあまり期待できないと考えています。


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[参考サイト]
TETRA, Terrestrial Trunked Radio home page(英文)
[関連記事]
アイコム、英国Fylde MicroとdPMRで協業