2011/03/12

米HARRIS、LTEとP25の接続実証実験

昨日宮城県沖で発生したマグニチュード8.8の日本観測至上最大の地震、皆さんケガなどはありませんでしたか? 私は机の下に隠れるほど強い地震に遭ったのは初めてで、普段持ち歩いているラジオが大活躍しました。
それにしても震度7強と断続する余震にもかかわらず携帯電話回線が耐えられたことに正直驚いています。日本の通信インフラの堅牢さをあらためて知った次第です。

さて本題、主に官公庁・軍向けの無線機器を開発しているアメリカのHARRIS社はテキサス州ダラス周辺にあるDFW国際空港にてネットワーク大手ノキア・シーメンスのLTE回線とAPCO P25無線ネットワークを接続する同社のソリューション「VIDA」を使い実証実験を行うと発表しました。

Harris Corporation and Nokia Siemens Networks Demonstrate LTE Broadband Breakthrough at DFW International Airport(英文)

本記事にてたびたび取り上げますがアメリカには「パブリック・セーフティ」という治安維持の市民協力を目的とした無線ネットワークが古くから存在しており、FCC(連邦通信委員会)はアナログテレビ放送が終了した後の帯域700~800MHzにAPCO P25を採用した通信方式のナローバンド規格とLTEを採用したブロードバンド規格の2種類を定めています。

なぜトランシーバーを使った無線回線とLTEがドッキングしているのかについてはこちらの記事を参照いただくとして、今回HARRIS社はそのナローバンドとブロードバンドそしてインターネット回線を相互に接続するソリューションをDFW国際空港内で実証実験すると発表しました。

ニュースを簡単に説明しますと「無線機を使った音声通話をLTE回線間でやり取りが可能となる技術を空港で実験する」といったところです。この実験で採用された「VIDA LTE」はこれまでトランシーバー間でしか行えなかったやり取りをLTE回線を介して通信できる技術ですからインターネットが使えない有事の際にLTE回線網が生きていれば衛星を使うことなく数百キロ離れた地域との交信が可能となったり、LTEに対応したスマートフォンとAPCO P25のトランシーバーとのやり取りも可能となる技術です。

実験ではAPCO P25通信網とLTE通信網の間で既存のLTE回線の通信に支障をきたすことなく交信が可能なことを証明するために行われるようですがDFW国際空港のLTE回線にはすでに監視カメラ通信網が整っていることから、これらのビデオ映像転送を妨げることなく無線交信が成立するかが実験の重要なポイントとなるようでハードルは高いと思われます。

この実証実験が成功すればHARRIS社の「VIDA」技術の優秀さが証明されることでしょう。
アメリカのパブリック・セーフティでは今後既存のP25を使った無線通信回線とLTEはまったく別物として扱われるのではとこれまで解釈していましたがすでに両者の融合は始まりつつあるようで心配は杞憂に終わりそうです。


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