2014/06/27

八重洲無線 薄型特小FTH-508発表

八重洲無線(旧バーテックススタンダード)から意表をつくタイミングで特定小電力トランシーバーの新機種がリリースされました。
(八重洲無線公式サイトより転載)

薄型・軽量で最高水準の防塵・防水性を備えた全天候型トランシーバFTH-508を発売 - 八重洲無線株式会社



FTH-508は通信距離を伸ばす中継器対応の、充電すれば誰でもすぐ使える通話料無料のトランシーバーです。充電池や充電器、充電スタンド一式が付属していますのでオプション買い足し不要で、充電すればすぐ使えます。

外観は発売済みのFTH-307(L), FTH-308(L)と比べ横に8ミリ、縦に6ミリ長くなった一方、奥行きはなんと5ミリも薄くなっており、まさに単3電池1本サイズの薄さです。加えてただでさえ薄い本体に単3電池1本がもっこりすることなく(笑)スマートに内蔵できるのですから驚きですね。

本体上面はアルインコのDJ-P22DJ-P221(M/L)と同じ配置です。特にDJ-P221シリーズのようなねじ込み式防水キャップを採用しないコンセプトはDJ-P22と同じです。

IP67(一時的な水没対応で防塵)規格に対応するタフネスボディのため水や埃のかかる屋外用途にはバッチリです。ただし単3電池1本駆動のため音量は小さめですから、秘密兵器のイヤホンマイクを使わない限り、本体のみでの使用はレストランやゴルフ場など静かな空間での使用に限定されそうです。



機能は基本的にFTH-308と同等と考えて良さそうです。FTH-308と異なる部分としては
・LEDインジケーターがない
・電池フタの紛失の可能性が少なくなった
・着信バイブレーター機能追加
でしょう。

取扱説明書には明記されていませんがセットモードがFTH-307(L), FTH-308(L)と酷似していますから、多分FTH-508と相互でクローン機能が使えると想像します。

FTH-308を選ぶか、FTH-508を選ぶか・・・。薄さにこだわるのであればFTH-508、バイブレーション機能に魅力を感じなければFTH-307(L), FTH-308(L)、飛距離がほしい場合はFTH-308L、FTH-307Lという選択になりそうです。いずれも単3電池1本駆動ですから万一の電池切れでも乾電池の入手で対応可能。なおスピーカー音量を重視する場合は単3電池2本以上で駆動するモデルFTH-80 or MS80(モトローラブランド)を選ぶのが無難です。



いやはやしかし、FTH-308(L)のセットモードにあった謎の「SL-xx」がFTH-508の登場でようやく明らかになりました。

FTH-508をあらためてまじまじと見ますと1990年代、旧八重洲無線が合併する前のスタンダードブランドの製品HX808シリーズを思い出します。

あちらはガム型電池の採用で薄さ15ミリを達成していましたのでFTH-508のほうが20年前の製品より厚みで2ミリ負けています(汗)。しかし今回発売となるFTH-508は単3電池1本内蔵でわずか2ミリ増。他機種と比べれば格段にスリムですし、単3という汎用バッテリーが使えるメリットは高評価です。また細かい部分ですがHX-808シリーズよりも文字の表示が大きく見やすくなったり混信対策強化を含む設定項目などが拡充されていたりと、20年前と比べ使い勝手は向上しています。

この充電器や充電池、充電スタンド付属というFTH-508のコンセプトはなんだか発売済みのFTH-208と酷似していると思います。



FTH-307/308シリーズの次はFTH-208後継モデルがFTH-2xxと予想していましたが八重洲無線に見透かされていたかのごとく、よしおの予想は見事に裏切られました。

欲を言うならばですが、このカテゴリーのモデルには是非1ミリワット連続送信機能をつけて欲しいものです。なぜエントリークラスのFTH-80(MS80)についているものがミドル~ハイエンドクラスのFTH-508には搭載されていないのか謎です。

とうの昔に技適を取得したはずのFTH-2xxは一体どこへ行ってしまったのかはさておき、単3電池駆動にこだわりながらも薄さを追求したFTH-508。これにロングアンテナモデルとなるであろう“FTH-508L”なるものが登場したら・・・まさに超小型特小トランシーバー祭りです。

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2014/06/25

ユピテル MVT-9000MKII

MVT-9000シリーズはゴルフナビやGPSレーダー探知機、ドライブレコーダーで有名なユピテルからリリースされていたハイエンド広帯域受信機です。



MVT-9000シリーズのデザインはハンディ受信機史上最も優れていると思います。
特にスピーカーから液晶に至るまでのなだらかなS字カーブ、テンキー付近を大胆にカットしアクセントをつけた楕円のくぼみはヨーロピアンデザインスピリッツに通じるのではないかと言えるほどの優雅さを兼ね備えています。

実際ユピテルの受信機はMVT-7100、MVT-9000、MVT-9000MKIIを筆頭に欧州を中心として輸出されていたようで、確かに使い勝手やデザインに賞賛する声がありますからあながち間違いではなさそうです。デザイナー、エンジニア集団は本当に優秀と思います。



MVT-9000MKIIの上面はオーソドックスなスケルチ、ボリューム、ダイヤルが独立して並び、アンテナ端子はワンタッチで着脱可能なBNCコネクタです。

各ノブの間はMVT-7100とほぼ同じですがツマミの形状に傾斜がなくなったこともあり指を入れる隙間は狭まっています。しかし操作のコツを掴めば特に気になりません。


バッテリーは当時主流の単3電池4本。リチウムイオン電池に慣れたスマホユーザーには信じられない構成と思います。


大きさは名機MVT-7100と同等。ただしMVT-9000MKIIのほうがヘビーウェイトです。


持ち運びにはやや大きいと思うアルインコのDJ-X81と比べても圧倒的な存在感.....。


八重洲無線(旧バーテックススタンダード) のVX-3/VR-160と厚みを比べるとなんとおよそ1.5倍。かといってメタボリックでもなく全体に大きいためプロポーションは良好です。

小型受信機登場以前はこのサイズが当たり前でしたから個人的に持ち運びの印象は悪くはありません。そもそもこのサイズはアイコムのIC-R20やエーオーアールのAR8200シリーズ、アルインコのDJ-X2000と同等ですから驚くほどでもないと思います。



使ってみた感想(レビュー)をいくつか。

操作はユピテルのレシーバーを使われたことのある方ならばしっくりくるでしょう。比較的機能は豊富ですが小型機にありがちなセットモードのようにメニューが階層化されていないので分かりやすいです。

受信感度は総じてMVT-7100とほぼ同等。1.7GHz~2GHzの感度は2.1GHz帯の携帯電話や無線LANが本格的に登場する以前の製品としては良く出来ています。内部スプリアスはIC-R6にはかないませんがDJ-X81やMVT-7100よりも少なくVR-160とほぼ同等かやや少なめでしょうか。

サーチ・スキャンスピードもMVT-7100とほとんど変わりません。

バックライトは明るくきらびやかです。連続点灯のほかパワーセーブを入れると一定時間経過後消灯しキー操作直後、再び光り出す設定も可能です。

音質ですが無線、ラジオを問わず耳が疲れにくく、とにかく聴きやすいサウンドを再生します。

スピーカー位置が同じく本体上側にあるエーオーアールの傑作AR8000はWFMの再生で高音にキーンという音がわずかにしますがAM、NFMではそれが目立たずMVT-9000MK2と同じような音質と思いますからもしかするとスピーカーの位置がヌケの良い音を出す秘密の一つかもしれません。

MVT-7100と比べますとMVT-9000MKIIのほうが僅差ですが少しだけクリアで好みの音です。列車無線も思わず声に出してしまうほど聴きやすいです。空線キャンセラーを外付けしてでも使用する価値はありますね。航空無線受信中のバックノイズの少なさ、交信終了直後のスマートな切れ味もさすがユピテルといったところです。

玄人向きの機能ですがスクランブル解読機能はキャリア漏れが聴感上皆無です。操作体系に慣れればかなり実用的です。



最新のID-51と比べ多少色あせるものの大型液晶を装備。デザインもさることながら音質・感度ともに申し分なし。

90年代後半の当時はAR8000も実装していなかった音声受信中のリアルタイムバンドスコープを搭載し、2GHz超えの受信を可能とするMVT-9000シリーズ。無線のほとんどがアナログからデジタルへとシフトする激動の今だからこそ持っておきたい1台と言えるでしょう。

ご存知のようにユピテルは2014年2月を最後に広帯域受信機の開発を終了したそうです。最後の製品となるMVT-7500は7200までのシリーズと比べ基本性能が異なるとのことで次に登場するであろうデジタル復調機能受信機を期待していただけに残念です。他メーカーの追随を許さない独自のこだわりを持つユピテルのレシーバー製造中止が惜しいと思うのは私だけではないはずです。

受注生産でも構わないですからせめてかつてのVT-125/VT-225のように、独特の音質を奏でるエアバンド受信専用機だけでもいつか再び登場させてほしいものです。もちろんソニーのAIR-7のように長波~短波も受信可能な機種でも大歓迎です。

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2014/06/21

アルインコ DJ-PB27製品情報公開

DJ-PB20発表直後からカタログには掲載されていますがDJ-PB27の製品情報がまたしてもひっそり?と公開されています。
(アルインコ公式サイトより転載)

47ch 特定小電力トランシーバー DJ-PB27 - アルインコ株式会社

DJ-PB27はDJ-PB20DJ-PA20と比べ通話範囲を伸ばす中継器に対応する、購入後単3電池3本を装填すればだれでもすぐに使える通話料一切不要のトランシーバーです。

現行機種DJ-PA27とDJ-PB27の違いは主に縦横サイズがさらにコンパクト化し若干の厚みと重さが小さくなり、電池残量低下お知らせ、チャンネル番号非表示、緊急通報、2台の無線機を操っているかのような操作が可能といわれるデュアルオペレーション、イヤホンマイク断線検知、IP54防滴防塵、アルインコ製のレピータリモコン(対応機種限定)があります。

他にマニアックな仕様の違いとして1ミリワット送信機能、音量の4倍アップ、外部電源入力端子の廃止、送信電流10mA低減、液晶チャンネル表示拡大、従来からさらに電池の状態を細かく把握可能な電池残量表示等もあります。



DJ-PA20やDJ-PA27シリーズをお使いの方はそのままオプションを引き継げますからコスト圧縮が可能です。DJ-PB27はイヤホンマイクを使用しない場合は少雨でも使えますから屋外での運用も安心です。また中継器(レピーター)リモコン機能対応ということで、新規にDJ-PB27を導入される場合は通話距離を約2倍に伸ばすDJ-P112R、DJ-P111R、DJ-P101Rといったリモコン機能対応中継器(レピーター)を併用がお勧めです。

アンテナは固定式ではなく折りたたみ式ですから感度の足りない場合に上へのばして使うなど、好みに応じたフレキシブルな使い方ができますね。

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2014/06/15

DJ-X81入手から1年・・・

早いものでアルインコの受信機DJ-X81を入手して1年以上が過ぎました。ここでは現在のDJ-X81の様子をレポートします。



いきなり結論ですが、よしお所有のDJ-X81は完全にベッドルームに鎮座し緊急速報受信専用の固定機ユースとなって少々ホコリをかぶり始めています。

当初は携帯電話に緊急放送受信機能がなかったこともあり、無線やラジオを聴きながら地震速報や津波情報を待機するツールとしての役割を果たしていました。しかし緊急放送待機状態のDJ-X81の電池寿命はたったの1日半程度。そのためDJ-X81を外へ連れ出すとほぼ毎日充電する必要がありました。

1日充電しないと次の日の夕方には電池が放電し切る.....こんな状態が何度か続きました。当然ですが充電池が放電し切ると寿命はみるみるうちに短くなります。USBモバイル電源で充電できればよいのですがDJ-X81の動作電圧は5.4~6Vのため微妙にUSB駆動はできない仕様となっています。2500mAhクラスの別売り高容量充電池でDJ-X81を駆動すると2日程度持つことからこれらを複数所持し移動したこともありました。

やがて毎日電池を充電するのが面倒になり、遂にはDJ-X81を持ち出すのをやめてしまい現在に至るという訳です。緊急放送受信を止め電池の減りを抑える選択肢や予備電池を持ち歩く選択肢もありましたが、何故か持ち出すこと自体を止めてしまったのです。



このテンキーがありAMラジオ放送も市販のラジオ以上の高感度、他機種と比べ格段に聴きやすくエアバンドなども豊かな音質で操作性もなかなかのDJ-X81を持ち出さなくなった上記以外の理由は恐らく以下が原因ではないかと思います:
・空き線キャンセラーのキャリア漏れが八重洲無線のVX-8やVX-3、VX-2、VR-160よりも多い
・出先でUSB充電できない
・本体奥行きが厚く大きい、重い

日々移動する用途ですと普段の持ち運びに支障をきたさない製品のほうが都合がよいようです。



ということで今度は高感度で爆速スキャン性能を持つと言われているアイコムのIC-R6を連れ出すことにしました。IC-R6はAMラジオ放送の感度は低いものの4.5~6Vの外部電源に対応し、外出先で電池切れを起こしてもUSB給電できるはずです。

やはり受信機の使い勝手は実際に使ってみて分かるものですね。

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2014/06/01

米アルインコ、DJ-500シリーズを発売

米国のアルインコ公式サイトでは今年(2014年)4月すでに発表されていましたがDJ-500なるシリーズのハンディ機が国外で発売され始めました。
(アルインコUSA公式サイトから引用、SPマイクはオプション)

DJ-500T/E Detail Information - ALINCO USA(英文)


DJ-500シリーズは同社から発表済みのDJ-100DJ-W100と同様の米国MIL規格に準拠した、デュアルバンドハンディです。これまで同社のハイエンドハンディ機以外へは採用されなかったドットマトリクス液晶が採用され、どことなく八重洲(旧バーテックススタンダード)のVX-170やVX-177のようなテイストを含みながらこれまでから同社の流れをくむV字デザインです。

海外向けにもかかわらず国内の放送局を網羅する76~108MHzのFMラジオを搭載していますが八重洲のVX-3、VX-8D、FT-1DやアイコムのID-51などのような、FMラジオ受信中に無線交信を受信するとラジオ受信を中断する機能が搭載されているかは不明です。

液晶表示はAORのAR8000などと同じ2VFOも可能ですが2波同時受信の記載が見当たらないことから、どうやら切り替え式デュアルバンド機のようです。





現地での市場価格はおおよそ2万円前後と、破格のエントリー機水準ですから同社国内モデルのDJ-S57とキャラクターがかぶります。

両者の外観は一見したところドットマトリクス有無とテンキー有無だけの違いのようですが機能など、内部はどの程度異なるのでしょうか。DJ-S57とDJ-500の仕様比較表を元にこれらをひも解いていきましょう。
(クリックして拡大)

受信感度はDJ-S57が上です。またDJ-500はリチウムイオンバッテリー駆動専用機のようです。

機能はそれぞれの機種の仕向地が互いに異なることもあり一概に言えません。ただDJ-500にはトーンスケルチやデジタルコードスケルチのスキャン機能があるようです。加えてDJ-500はトーンスケルチの設定がDJ-S57よりも多いようです。

さらに液晶バックライトが3色変更可能.....なんと桜色もあるんですね。せっかくですから本体色もパネル交換で変更可能にするとよいのではと思ってしまいます。

気になる点がひとつ。
VOX機能について、Web上の商品説明と取扱説明書前半に「内部VOX」とありますが説明書後半では「別途オプションのイヤホンマイクが必要」とあります。恐らくイヤホンマイクやスピーカーマイクをつなぐことで初めてDJ-500の内部に搭載されたVOX機能が動作するということなのでしょう。





DJ-500シリーズのスペックをひと通り見た感想としては最近の米国市場に流通する低価格アマチュアハンディとほぼ同等の性能と思います。

この傾向は国内の特小ハンディ市場で近年流行しています、使いやすさと機能を第一に性能はほんの少し妥協といった状況とほぼ同じ傾向でしょうか。その根拠は例えば防水防塵規格がDJ-S57よりも若干劣る面からも読み取れます。背景にはアメリカでも国内と同様、低価格品の需要が高まっている状況も考えられます。

もしDJ-500シリーズの国内版が発売されたらどうしますか?

私が仮にDJ-500を選ぶ立場ならFMラジオ機能は別の受信機に任せ、同価格帯で広帯域受信機能を持つ八重洲無線のFT-60を選ぶのかもしれません。もしトーンスキャンやDCSスキャンの性能がDJ-X81を超えるものであればDJ-500を入手するかもしれません。

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【追記】アルインコDJ-X81雑感 (2013/05/29)