2011/01/31

ビクター、FMラジオ内蔵ポータブルレコーダー(2/1更新)

ソニーに続きビクターからもラジオ内蔵ポータブルタイプのメモリーレコーダーが発表されています。

ポータブルデジタルレコーダー「RD-R1」
ポータブルデジタルレコーダー「RD-R2」

RD-R1/R2は音楽おけいこ用と広告されラジオ録音が可能と敢えて宣伝されてないためこの辺りの仕様詳細は不明ですがリニアPCM録音が可能なことから音質面で期待できそうです。
もしかするとラジオは128kbps(SPモード)のMP3でのみ録音可能とか、あるいはラジオは録音できないというオチも考えられない話ではありませんが録音タイマーが装備されているためラジオが予約録音できない可能性は低いでしょう。

FM専用のためAMリスナーは対象から外れます。内蔵メモリーはなくマイクロSD/SDHCカードのみという点、タイマー録音の予約プログラム数が1プログラムのみというこれらの内容を考慮しラジオ録音にウェイトを置いて検討した場合、ソニーのICZ-R50と比べスペック上優れているとは言えません。ただあまりにも小さすぎることもなく、ステレオスピーカー内蔵のポータブルタイプという観点からすると興味深い製品です。

このRD-R1/R2は製品ページとカタログを見る限り、どちらもラジオ録音用途を押し出したモデルではなくラジオと録音の関係も不明ですから今後の追加情報を待つ必要があります。
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2/1追記:報道資料内「その他の特徴」に「タイマー録音機能つきFMチューナー内蔵(AMチューナーは内蔵していません)」とありましたのでFMラジオの録音は可能なようです。

2011/01/28

Uniden - SC230受信機スペック考察

無線・受信をホビーにすると国内ではなぜか海外製品に注目する機会が少ないものです。ということで海外で現在発売されている無線機器・受信機器をチェックしてみましょう。訳に間違いがあるかもしれませんのであくまで参考程度にとどめてください。


今回取り上げるのはBearcatブランドで有名なユニデンアメリカから現在発売中の受信機、SC230です。
ユニデンダイレクトで149ドルと、ユニデンの受信機では価格が普及機種並みですが日本の受信機の同クラスにはあまり装備されていない機能や独特の機能がいくつかありました。それを少し紹介します。

・ダイナミックアロケートチャンネルメモリー
アイコムIC-RX7IC-R6に搭載されたメモリー管理方法とほぼ同様の方式のようです。アイコムが導入する以前から採用していたようです。

・クロースコール(R)キャプチャテクノロジー
アルインコDJ-X2000DJ-X11に搭載されているFチューン(瞬間同調機能)と言い換えられます。
アルインコのFチューン機能の詳細は未確認ですがSC230には瞬間同調したレピーター周波数のリバース周波数もスキャンする機能や瞬間同調不要な周波数をあらかじめパスする機能、瞬間同調受信した周波数を受信機に自動保存する機能が装備されているようです。

・DCS/CTCSSラピッドデコード
デコード速度は別として日本では通常高級機種に装備されている機能です。SC230がどのくらい「ラピッド」か気になります。

・オン-エアプログラム
パソコンと送信機を使い複数台(推奨:20台以上)のSC230へ内部設定が一括同時クローンできる機能とのこと。つまり複数の受信機を1台ずつ何度もケーブルとつなぎプログラムする時間と手間が不要ということです。
なぜ送信機が必要なのか、どのようにクローニングするのか、SC230の商品説明と説明書からはイメージしにくいですが同機能を有していると思われる上位機種BCD396Tの説明書から察すると、恐らくFAXのように音声帯域でクローニングデーターをSC230に転送する機能と見受けられます。。。ってこれが本当なら実に驚くべき機能ですね。



以上ざっくりユニデンアメリカのSC230の機能を紹介しましたがユニデンの受信機って低価格にもかかわらず日本の受信機と比較して実に機能が豊富と感じました。もっとも受信機普及率が日本とアメリカでは桁違いと考えられるため一概には言えませんが安価なのは確かです。

このSC230、日本の受信フリークならば試したくなる一台でしょう。


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[参考資料]
Uniden America SC230 Owner's Manual English PDF
Uniden BCD396T English PDF - OWNER'S MANUAL

2011/01/27

KDDI、LISMOで遠方のFMが聴けるサービス

KDDIが全国民放FMラジオ番組をau携帯電話向け音楽ストリーミングサービス「LISMO WAVE」の「ラジオチャンネル」上で配信開始しました。

音楽ストリーミングサービス「LISMO WAVE」の提供開始について

類似のサービスはradikoでも実施されていますがradikoは放送地域が限定されるため、たとえば大阪にいる場合東京のFMを聴取できない制限がありました。しかし今回のサービスは日本全国auの携帯電話が使える範囲であれば全国ほとんどの民放FM番組が聴取できるという非常に画期的なものです。

あの番組、毎週聴きたいんだけれど電波が届かない・・・という悩みのお持ちの方にとってはまさに長年の夢がかなったといえる一大事件です。
肝心の音質についてはビットレートなどストリーミング配信の詳細が現時点で非公開らしく残念ながら情報がありません。ですがいずれサービス会社のKDDIや有志の方々によって明らかになっていくでしょう。高音質であれば「LISMO WAVE」リスナーは今後増えるかもしれません。

このサービスによってはるか遠方リスナーからのお便りが番組内で紹介されることもあるでしょう。またFM放送局同士の結びつきが強くなれば各ラジオリスナー同士、町同士の交流もいっそう盛んになることが期待できます。そうすればお互いの地域で今まで以上に経済効果も見込めるでしょう。

インターネットが一般に認知されるようになって十数年、地域と公共の壁を越えたラジオ放送がついに解禁となりました。サービスはまだ始まったばかりですから今後の展開が楽しみですね。

2011/01/26

ソニー、SDカード対応ラジオレコーダー

他製品とは一線を画すポータブルラジオレコーダーがソニーから発表されました。

AM-FMラジオ放送を最長178時間録音可能 ポータブルラジオレコーダー発売

ソニーからラジオ関連製品が発表されるのは久しぶりですから非常に喜ばしいことです。

今回発表されたポータブルラジオレコーダーICZ-R50は“ラジカセ”のカセット部がICレコーダーに代わったものと言えます。メモリーを内蔵していますからメモリーカードを用意しなくても録音ができます。メモリースティックデュオやSD/SDHCカードも使えます。
ステレオマイクロホンと大型ステレオスピーカーを内蔵し、プラグインパワー(※)対応外部ステレオマイクロホン入力端子を装備しています。ラジオも聴け、20番組まで予約録音可能です。



玄人の視点からICZ-R50の特徴をいくつか拾い出してみます。

ラジオ録音に限定しますと
(1)録音周波数特性が50-20000Hz
(2)録音ビットレートがMP3ステレオ192kbpsに対応している
が挙げられます。
(1)の周波数特性はFMの音質を十分カバーしています。(2)は競合他社のラジオ内蔵ICレコーダが128kbpsを上回るビットレートでラジオを録音できない(2011年1月現在)ことを考えるとかなりのアドバンテージがあります。

現代の一般向けポータブルラジオではほとんどお目に掛かれないAMラジオ用外部アンテナ端子を贅沢に装備し、なおかつAM外部アンテナ付属という徹底ぶりは外出先での遠距離受信用途に是非!とアピールしているかのようです。

ATRACやLPECといったソニー独自のフォーマットをサポートせずMP3録音&再生、リニアPCM再生、WMA再生、AAC再生にのみ対応する割り切った姿勢とSDHCカードにも対応する姿勢には相当驚かされました。

そして実際に使ってみなければわかりませんが本体に早送り・巻き戻しボタンを敢えて搭載していることもポイントの一つです。語学学習や会議録音などにはなくてはならないボタンだからです。

付属ソフトをパソコンにインストールすることでパソコンからラジオの予約録音が可能な拡張機能にも目を見張ります。



以上のように、今回ソニーから発表されたICZ-R50はこれまでのICレコーダーやラジオ録音の不満解消に期待が持てる製品と思われます。

ラジオ録音機能のついたICレコーダーはオリンパスや三洋電機などからも多数発売されていますが他製品と比べても手のひらより大きめですから使いやすそうです。本格的なステレオスピーカーを本体に内蔵したポータブルタイプのAM/FMラジオ内蔵レコーダーは今回が初ではないでしょうか。

ICレコーダー選びで
・文字表示をもう少し大きくしてほしい
・ボタンをもっと押しやすくしてほしい
・もっと大きなICレコーダーがほしい
・録音したものをみんなで聞きたい
・ICレコーダーという最新機器をとにかく使いたい
・ラジオも聴きたい
・できるだけいい音でラジオを録音したい
・語学に使いたい
.....
といった悩み解消の可能性を秘めるICZ-R50は現状(2011年1月現在)唯一の選択肢かもしれません。



ソニーが語学学習をターゲットとして録音機とラジオを一体化したのは15年ほど前に発売されていたカセットとラジオの一体機WA-R9000以来久しぶりとなります。WA-R9000を語り始めるとしばらく止まらなくなりますから今回は触れないことにします。

このICZ-R50の発売は2/21となっていますが1/25からソニーショールーム・ソニーストアで先行展示されているようです。無線フリークとして久しぶりに注目できるソニー製品ですから是非発売前に一度見に行こうと考えています。



(言葉の説明)
※プラグインパワー:ほとんどの外部マイクロホンが使える機能

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[関連情報]
ICZ-R50商品情報
ICZ-R50スペシャルコンテンツ

2011/01/25

総務省、無線設備など規則改正の意見募集

2011年1月21日付けで発表された総務省の公示です。

無線設備規則及び特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則の各一部を改正する省令案等に係る意見募集

内容が複数のPDFファイルに分割されており読み辛い気もしますが、ざっと目を通した感じでは今後使用されるであろう2.5~3GHzに対して送信出力の低減とスプリアス(要らない電波を出す)基準を厳しくする旨が解釈できる内容となっているようです。

送信出力を従来よりも低めに改正する理由とスプリアス基準厳格化の理由はいずれも基地局の小エリア化により電波を有効利用したいという国の思惑が見え隠れしているように思えます。確かに先日アメリカのFCCが電波の有効利用のためナローバンド化強制移行(詳細はこちらの記事を参照ください)に踏み切ったように電波資源の有効利用問題は避けて通れないですから今後サービスが開始される周波数の利用基準をあらかじめ厳しくしたい思惑には賛同したい気分にもなります。

個人が意見できる立場にないのは残念ですが2.5GHz~3GHzがどうしても使いたい!人もそれほど多くはないでしょうから無線家や受信家がこの規則改正によって受ける影響は軽微でしょう。

実は同じく1/21の時点で総務省から電波利用税の改正に関する意見募集結果も公示されています。こちらのほうが私たちにとって非常に重要な内容ですが、あまりにも先行きが不透明なため今回こちらの話題を取り上げました。下記にリンクを張りましたので興味があればそちらものぞいてみてください。

[関連資料]
「電波利用料の見直しに係る料額算定の具体化方針(案)」に対する意見募集の結果

2011/01/24

Vスタンダード、特小トランシーバー FTH-50発表

1/23(日)、秋葉原の歩行者天国が期限付きで再開されました! 秋葉原は無線屋・受信屋の聖地でもありますから非常に喜ばしいことです。機会があれば再開されたホコ天を是非見たいものですね。


さてさて、さっそく本題ですが意表をつくタイミングでバーテックス・スタンダードから免許・資格不要で使える新型?特定小電力トランシーバーが発表されました。


本体の写真をご覧になった方はお気づきのはず。というのも以前に発売されたモトローラブランドの特定小電力トランシーバー、MS50と非常によく似ているからです。もっともMS50はバーテックス・スタンダードがモトローラブランドで発売しているため「似ている」という表現は好ましくないかもしれません。

ではMS50と今回発表されたFTH-50は何が違うのでしょうか。

それぞれの商品ページとカタログを見てもブランド名とカラーリング以外スペックもまったく同じです。しかしじっくり観察するとMS50よりもFTH-50の価格が安いことに気がつきます。それはなぜでしょう。



答えは付属品の違いにありました。MS50はリチウムイオン充電池と充電器のセットが付属しており単3乾電池ケースが別売り。対してFTH-50は乾電池ケースが付属しリチウムイオン充電池と充電器が別売りとなっています。
この乾電池ケース付属タイプとなるFTH-50の発売によってトランシーバーの選択肢が広がったと言えます。ときどきトランシーバーを使うユーザーはFTH-50を、業務などで毎日使うヘビーユーザーはMS50を選ぶのが一つの選ぶ目安でしょう。

バーテックス・スタンダードの特定小電力トランシーバーラインナップでは最安を誇るFTH-50ですが侮るなかれ、MS50と同様に音声定格出力が400mWと単3電池2本で動作するクラスをはるかに超える信じられない性能を有しているようです。
しかも受信音質調整機能やマイク感度自動調整機能、押しやすい送信ボタンに見やすい大型受信ランプなどなど、上位クラスにも装備されていないかゆいところに手の届く機能が満載でなおかつ思わず目を引くおしゃれなデザインですから個人でも買って損はないと思います。

ひとつ注意したいのは最小動作電圧が2.2Vという点です。取り扱い説明書には「単3充電池は使わないでください」などと記載されているかもしれません。この場合エネループなどの単3充電池で駆動する運用方法は故障の可能性も含めメーカーが動作保証しないことになります。繰り返しになりますが充電池駆動を求める場合は今回発表されたFTH-50よりもリチウムイオン充電池と充電器がセットのMS50を選ぶと確実でしょう。

それにしてもエントリークラスの特定小電力トランシーバーにも手を抜くことなく配慮するバーテックス・スタンダードには脱帽です。
個人的にはこのFTH-50(MS50)の筐体と機能に中継用周波数を加えた機種を発売してくれないかなーと期待しています。

2011/01/21

“受信機の時代は終わる”~オンタリオ州の事例

アメリカやカナダではパブリック・セーフティという警察無線や消防無線を傍受できる受信ジャンルがあるようです。現在の日本では警察無線の聴取が一般に開放されることなどまず考えられないですが海外では市民が警察に協力する目的でこの機会が与えられていることもあるようです。そんな警察無線や消防無線を傍受する機会がカナダ オンタリオ州のある地域で幕を閉じるというニュースが飛び込んできました。

Timmins Police now installing new high-tech data-radio system in all patrol cars(英文)

この記事はカナダの都市ティミンズの保安官Tom Buczkowski氏が発言した「警察無線を傍受する時代は終わる」との見出しで書かれており、内容は古くなったアナログ方式のパトカーの車載無線機と携帯無線機を暗号化した音声とデータで通信する新型システムに切り替えるというものです。

Buczkowski氏は「新しい無線データネットワークは警ら中の保安と警察官の身の安全をより強固にすると同時に警察のより迅速な対応が可能となる」 「我々は(無線を)デジタルシステムに移行中だ。デジタル暗号化システムに移行することで受信機の時代は終焉を迎える。もはや市民が我々の通信を傍受することはない」と話したようです。
この背景には警察に協力するために警察無線を傍受している人がいる一方で強盗や侵入盗といった"悪党"も警察無線を傍受している問題が隠れています。
同時にBuczkowski氏は「我々は市民の援助を十分認識しており我々も地域で犯罪の解決や治安維持に市民の助けを必要としている」とも話しています。無線を傍受不可能にすることを明らかにしておきながら協力を仰ぐ発言にはいささか疑問を感じますが前述のような課題があるのも事実です。とは言え、今までの習慣をいきなり変える行為に対し市民が安易に納得するとも思えません。

このティミンズの新型無線システム移行は間違いなく現地の受信フリークを発狂させるニュースです。万一、新型無線システムがカナダ・アメリカ全土に広がってしまった場合 せっかくデジタル方式に移行したパブリック・セーフティの設備は無駄となってしまい、APCO P25が復調可能となった受信機も意味を成さなくなってしまいます。
もしもティミンズのやり方が成功すればカナダ・アメリカでは恐らく“受信機の時代は終わる”ことになるでしょう。このカナダの一部の都市から始まった警察無線が傍受できなくなるかもしれないという流れは先進国アメリカにおける社会のあり方を大きく変えるかもしれません。

2011/01/20

アイコム、英国Fylde MicroとdPMRで協業

アイコムから非常にビッグなニュースが飛んできました。

アイコム株式会社と Fylde Micro Ltd. が、欧州のデジタル業務無線システム標準規格(dPMR™)に合致する製品開発で協業。

デジタル無線システムの標準規格はdPMR(Digital Private Mobile Radio)の他にDMR(DIGITAL MOBILE RADIO ASSOCIATION)があるようで、このDMRにはアイコム以外にケンウッド、バーテックス・スタンダード、そしてモトローラ、HYTなどが参加しているようですがdPMRは現状アイコムとHYTが参加しているようです。
両者の協業の目的について詳細は上記ニュースリリースとそのリンク先の英文を参照いただくとして、ここではアイコムとFylde Microが手を組む理由をあらためて簡単に説明しますと「最新の無線技術を持つアイコムと高度な無線システムを多数手がけるFylde Microがお互いの技術を出し合い販売力を強化するため」とまとめられましょう。

ソリューションを一つのパッケージとして販売するFylde Microの企業活動は例として“新幹線を車両だけでなく線路、架線、運行に必要な集中制御システムなどを使い方の提案と説明を含めまとめて販売すること”をイメージすれば分かりやすいでしょうか。つまりアイコムは無線機だけを販売する以外に一つのシステムとして販売すればより多くのお客さんに無線機を買ってもらえると考えたようです。確かにトランシーバーを複数台購入してもどうやってトランシーバーを配置すれば業務効率向上が図れるか、なんて普通では考えにくいものです。

無線機と周辺機器を単に販売するだけでなくパッケージとして使い方まで提案する企業活動はインターネットビジネスでは盛んに行われていますが無線業界でも行える予知があるとは今まで思いもしませんでした。なるほど、無線もネットワークの一つととらえることでこの回答にたどり着けたということですね。

それにしても欧米ではこのように無線システムの標準化が私たちの想像をはるかに超えたところで進んでいるようです。恐らく欧米では日本と比べ無線への関心が強いのでしょう。
今年も無線業界は熱くなりそうです。

2011/01/19

アルインコ、デジタル登録局トランシーバー

アイコム、バーテックス・スタンダード、ケンウッドと登録局対応トランシーバーが続々と登場する中、遂にアルインコからも登録局対応のデジタルトランシーバーが発表されました。

これからは、仕事も遊びもデジタル無線。デジタル登録局DJ-DP10デビュー!

驚いたことにこのDJ-DP10は標準バッテリーパック付属のAセットと大容量バッテリーパック付属のBセット付属のBセットがあるようです。しかもどちらのセットにも長さの異なるアンテナが1本ずつ付属するという豪華ぶり。たとえば今日は高層ビル作業でアンテナが邪魔だからショートに、明日は護岸工事だからロングで・・・という着せ替えも別売り品を調達せずにできます。
遠距離の特定小電力トランシーバー中継器同士を接続する回線に使うことも考えられますがこの場合DJ-DP10の通信遅延がどの程度なのか少し気になります。

ひとつ注意すべきことは製品ページに記載のとおり他社の3R規格の登録局対応デジタルトランシーバーと互換性がない(2011年1月現在はDJ-DP10同士のみでしか使えない)点。言い換えると秘匿性能が高いということです。これを念頭に置いた上でコスト重視の場合はDJ-DP10を選べば間違いなさそうです。
他社製品と比べてスピーカー出力、送信出力の定格は少なめですが、スピーカー出力はインカムを使う場合に問題とはなりませんし送信出力が最大1W(他社製品は最大5W)は免許・資格不要の特定小電力トランシーバーの100倍ですから特定小電力トランシーバーの代替用途にはあまりにも十分すぎます。また他社製品よりも軽量なのも魅力の一つです。

ここまで主に工事現場など業務用途で使う視点からDJ-DP10をカタログスペックだけで検証しました。このDJ-DP10は他社製品と同様に免許取得用の申請書類一式が付属していますから個人で購入する場合も手続きが楽そうです。
価格面でアルインコが業界に風穴を開けた登録局トランシーバー。今後一般への普及に期待が掛かります。

2011/01/17

米国各州で緊急用無線新システム導入の動き

先日(2011/1/9)に起きた米アリゾナ州の銃乱射事件が発端となりアメリカ国内で緊急無線システムの構築が各州内から発表されています。ざっくり内容を見ていきましょう。

Radio upgrades bring county up-to-date
悲劇が発生したトゥーソンと同州にあるセギーンでは事件後、デジタル無線通信システム構築に38万ドルの予算捻出に全委員が満場一致したそうです。この件についてセギーンの保安官は「第一通報者の安全と数ある異なる機関同士がお互いに連絡を取り合うこと両方の拡大のため」と話したそうです。

Schumer says cuts to emergency radio system puts region at risk
ニューヨーク州オールバニーではアメリカの有名な政治家Charles Schumer 氏が事件後多数の警察官が警備する中、首都がテロの脅威にさらされた場合のもろさとオールバニー付近の都市間を結ぶ無線回線を現状持っていないことについて演説の中で触れたようです。

Franklin Co. to shift to new digital emergency services radio system
マサチューセッツ州フランクリンではこれまでの緊急用無線システムをデジタル化するようで、やはりセギーンと同様に第1通報者との連絡と安全に新システムが大いに有効と主張しています。


このように今回の事件は幸か不幸か無線機特需とデジタル通信の有用性を証明しつつある兆候を見せています。果たしてこれが無線機特需となるのか、また日本のメーカーが米国市場にどれだけ食い込めるのか、期待したいところです。

2011/01/16

米アリゾナ銃乱射事件の無線が公開

下記BBCニュースのアメリカ・カナダ版のページに2011年1月9日、アメリカ・アリゾナ州で発生した政治家襲撃事件直後の警察無線音声ファイルが公開されています。

Police radio recording of Tucson shooting response(英文)

大事件当日の様子を伝える警察無線が一般公開されることは日本ではまず考えられないことです。アメリカの情報公開の前向きな姿勢に驚かされます。

2011/01/15

米FCC、VHF/UHFのナローバンド化を義務付け

アメリカのFCC(連邦通信委員会)は2013年1月までに150-512MHzのパブリック・セーフティと商用の、陸上移動通信1波あたりの占有周波数帯域を25kHzから12.5kHzに完全移行することを義務付けました。

VHF/UHF NARROWBANDING INFORMATION(英文)

上記ページ上ではすでにカウントダウンが始まっています。この試みはFCCが20年前からアナウンスしていたようですがついに強制移行が始まったようです。VHF/UHFのナローバンド化について詳細はこちら(プレゼンテーションファイル、英文)に詳細説明があります。


VHF帯以上で運用可能なアマチュア無線をお持ちの方ならWide/Narrowの切り替え(WFMとNFMの受信モード切替えではない)機能を一度はご覧になっているはずですから理解が早いでしょう。今回のFCCの取り決めはこの設定のうち"Wide"を特定用途のほぼ全てで使用禁止にするというものです。FCCが今回のような占有周波数帯域の圧縮を執行する理由としては上記英文に記載のとおり、周波数の有効利用が挙げられます。

この英文に記載の「2013年1月1日以降12.5kHz幅で運用しない免許保持者は当連邦委員会規則に違反し警告を含む罰金または免許失効となります」は今のところアメリカの話です。非商用のアマチュア無線やライセンスフリーラジオはこの規制とは関係ないでしょうからアメリカのアマチュア無線家がリグ(無線機)を補修する羽目にはならないはずです。もっとも、日本国内ではこの話を通り越してほとんどの商用通信がデジタル化するという残念な方向に進んでいるため関係はなさそうです。

2011/01/14

GRE、P25デジタル復調対応の次世代受信機

たまには海外の話題に触れてみます。先日アメリカで開催されたCES(家電見本市)2011では各メーカーから最新の家電が多数発表されました。数多く発表される新製品の中に『受信機はないのかよ~っ!』と思われた方は少なくないはず・・・ですがご安心を。
GREアメリカからこれまでの受信機の常識を変えるUI(ユーザーインターフェース)を搭載したデジタルP25復調対応のハンディ受信機、PSR-800がCES2011会場で発表されました。

GRE Introduces Next Generation Digital P25 Scanning Receiver(英文)

GREの副社長、Wayne Wilson氏は「(PSR-800は)購入した曲がすべて入っているMP3プレーヤーのように使えるのです。(受信機内部の)データベースにない周波数もお好みで入力を可能にしています。これほど受信が簡単になったことは今までかつてありません。」と話されたそうです。
同時に上記プレスリリースでは「PSR-800にはアメリカ・カナダのいかなるお客様用に対して(周波数が)あらかじめプログラム済みです。もはや受信ホビーはエキスパートだけのものではありません。PSR-800はPCにつなぐだけで最新の(周波数)データベースに簡単にアップデートできます」とPSR-800購入後の面倒な周波数の手動入力がほとんど不要で初心者でも購入後すぐに扱えることをアピールしています。

実はこのMP3プレーヤーのような新型UIを持つ受信機は同社が過去に発表したPSR-700が最初で今回発表されたPSR-800は前作PSR-700にAPCO P25デジタル無線復調機能が追加されたものと解釈してほぼ間違いないようです。
PSR-800には受信環境周辺の未知の電波に同調する機能もあるようですから受信機本体に10キーがなくても意外と不便を感じないかもしれません。

日本では過去にお手軽受信機としてマルハマや東野電気、ユピテルなどからこのPSR-800と若干似たコンセプトのものが発売されていました。しかしこれほどボタンが必要最小限かつ箱出し状態で周波数別ではなくジャンル別に聴きたいものが選べ、さらに周波数が自動アップデート可能というスマートな受信機は記憶にありません。
従来の受信の概念を変える発想をメーカーがユーザーに提起することは非常にまれなことから今回GREアメリカが発表した新コンセプトを持つPSR-800は実に興味深いと感じました。今後日本の受信機メーカーがどう動くか要注目です。

2011/01/11

総務省、"V-Low"周波数活用の意見を募集

来る2011年7月24日のXデー後アナログTVが使用している1-3chの周波数再編について、総務省が意見の募集を始めたとのことです。

総務省|V-Lowマルチメディア放送の制度枠組みについての意見募集及び参入希望調査の実施

どういうことなのか あえて説明しますと2011年(今年)アナログテレビが終わった後に電波が余るため、誰がどうやって使いたいのかお役人さんが調査する、ということです。

総務省は今後余る90-108MHz周波数を「マルチメディア放送」に割り当てると(一応)公表してはいますが、実際どのような目的で使えばいいのか具体的な考えがまとまっていないためこのような“公聴会”を開くと予想されます。
使い道が決まっていないのですから極端な話この帯域が「放送」以外で使われる可能性も否定はできません。超高速インターネットサービスに使われたり携帯電話などの無線電話に使われる可能性もまったくない話ではないのです。



この"V-Low"周波数を使うと厄介な問題があります。
無線・受信フリークな方が周知のとおり"V-Low"周波数を含む87-108MHzは海外ではFMラジオ放送に割り当てられているため夏場、中国や韓国からのFMラジオ放送によって混信が起こりやすいのです。
従来のFMラジオ放送の周波数を海外と同じ87-108MHzに引っ越す対策もありましょうがラジオの聴取人口がテレビのそれよりも多いとは考えづらいことも含め、経済効果は地デジほど見込めないでしょう。



以上のことを勘案すると今回総務省が意見を募集・参入希望調査するこの帯域はよほど魅力のあるサービスを提供する事業者でない限り活用が困難と思われます。

この帯域を新型特定大電力?トランシーバーやアマチュア無線などに一般開放してはという考え方もあります。しかし考えてみると下はFMラジオ放送に、上は航空旅客機管制にそれぞれ割り当てられていることから場合によっては命にかかわるため可能性は低いでしょう。
昨今日本では集中豪雨問題がありますからスペクトラム拡散送信などで外国放送の混信対策をした上で、米国で実施している竜巻警報のような気象通報専用に割り当てるのはありかもしれません。この場合きわめて遅延の少ない放送方式が同時に求められることにもなります。



さてここまでのお話、カンの鋭い方なら既にお察しでしょうが"V-Low"と呼称する90-108MHzはアナログTV停波後この帯域をしばらく誰も使わない状態が続くと容易に想像できます、非常にもったいないですが仕方ありません....。

アナログTV放送終了後に発生する電波の再割り当て問題は果たしてどうなるのか、今後も目が離せませんね。

2011/01/08

DJ-X1 by ALINCO

今回から過去に発売された無線機&受信機を振り返るシリーズを始めます。第1回目はコチラ。


アルインコのDJ-X1です。1990年代前半に登場したDJ-X1はほぼ同時期にアイコムから発売されたIC-R1の対抗馬でした。
受信周波数は0.1~1300MHzと現在でも通用する性能を誇っていますがこの時期の機種にはまだAM放送受信用バーアンテナが内蔵されておらず、AMラジオ受信時は電灯線か長いワイヤーアンテナを接続する必要がありました。

デザインは今見ると古めかしさを感じてしまいますが現在主流のバッテリーを背負わせる方式をいち早く取り入れています。いかんせん単3電池6本分の電圧が必要なことから電池を受信機に装着させたときの奥行きはベルトクリップで固定するのをためらうほどの大きさでした。
ただライバルのIC-R1と比べてキーイルミネーションが装備されていたためこだわり派からは支持を受けたようです。

空線キャンセラやトーンスケルチといった付加機能はありませんが基本機能は現在市販されているものと遜色がないため今でも十分使える受信機と言えるでしょう。

※カタログ内容は掲載許可を得ています

2011/01/03

スタンダード、登録局ハイパワートランシーバー

バーテックス・スタンダードから登録局対応のハンディトランシーバーが発売されました。

資格が不要、ハイパワー携帯型デジタルトランシーバ「VXD-10」を発売

この登録局対応トランシーバーは現在免許・資格がともに不要で使える特定小電力トランシーバーの500倍のパワーがあるためより遠距離の交信が期待できます。
ハイパワーなトランシーバーであることから総務省への免許申請が必要ですが申請用紙が付属しているため簡易業務と比べた場合、手続きは比較的容易と思われます。

またトランシーバーが持つすべての機能に互換性があるかは不明ですが、先に発表されたケンウッドのTCP-D503TPZ-D503と同じ3R規格で「ユーザーコード通信」に対応していますからお互い交信が可能です。いち早く2009年に登録局対応トランシーバーを発売したアイコムのIC-DPR5IC-DPR1とも互換性(どちらも3Rに対応)があるようです。



VXD-10は付属品一式がそろっているため個人購入用でしょう。すると同じように付属品が同梱されているTPZ-D503、IC-DPR5と競合することになります。ここでは簡単のため2010年12月同時期に発売されたVXD-10とTPZ-D503だけを比較してみます。

VXD-10とTPZ-D503のスペックを見る限り音量や電波出力・耐久性といった基本性能はおおよそ同じでどちらを導入しても遜色ないようですがカタログ・商品案内を見るとTPZ-D503はKenwoodならではのクリアな音質と本体2年保証、MIL-STD(米軍用規格)に準拠しているのが特徴。
対するVXD-10は交信用デジタル30波に加え 空で使える5波が受信できる(送信は不可)ことと上面のツマミで設定が迅速に切り替えられること、そして付属バッテリーの持続が11時間(TPZ-D503は7時間)の点が、それぞれ両者で異なっています。


価格は2011年1月現在でVXD-10のほうが安価なためコストと付属バッテリーの持ちを意識するとVXD-10に軍配が上がります。ただどちらの製品も非常に信頼のおける無線機メーカー製ですから最終的には購入者の判断に任されることになるでしょう。


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関連記事:ケンウッド、ハイパーデミトスなどデジタル無線機
関連情報:IC-DPR5ニュースリリース(アイコム)
IC-DPR1ニュースリリース(アイコム)

2011/01/01

MOVAの電波受信で想う

ついに2011年に突入しました。月並みですが今年もよろしくお願いします。

さて新年1発目の話題としては少々感慨深かったことを一つ。
先日東京ペティで入手したアンテナRL-30を取り付け、VX-8Dで810MHz帯をサーチしました。

VX-8Dのスペアナ機能を810MHz周辺で走らせた様子です。


これは第2世代携帯電話基地局(恐らくドコモのMOVA)の電波です。MOVAは2012年3月でサービス終了の告知がひっそりとされているようですが私の友人はしぶとく使用しています。

このスペアナの様子を見たとき思わず懐かしさを感じてしまいました。



時代は90年代の携帯電話が買い切り制になる前後。私は手持ちの受信機MVT-7100で朝から夜まで寝る間を惜しみ、いろいろな電波を探しスリルと臨場感を存分に楽しんでいました。

当時はアマチュア無線が今以上に多く使われており、朝から深夜まで144MHz帯も430MHz帯も上の写真のように交信電波でひしめき合っていました。アマチュア無線以外の帯域もほぼ例外ではありませんでした。

時代は変わり携帯電話・データ通信が全盛の現代。電波の変調方式もスペクトラム拡散となり味気ないものとなってしまいました。周囲で「アマチュア無線」といってもよき時代の方々の多くは退役してしまい、まず通じません。大手電気メーカーのソニーも民生用トランシーバーを数年前(2011年現在)ついに生産中止しました。そんな現状をかつての時代と比べたとき、何とも言えない寂しさを感じてしまったわけです。

あのときの懐かしさを言葉にするのはたやすくはありませんがデジタル全盛の現在と比べてしまうと言いようのないものがこみ上げてくるのは私だけでしょうか?




新年スタート早々しんみりとした話題になってしまいました。しかし無線に対して想いを馳せるのは決して悪いことではないと信じています。

一度衰退してしまったものを再び活気あるものとするにはかなりの力が必要ですが無線通信が当たり前になりすぎた現代だからこそ、普通の人に電波の面白さを身近に感じられる機会があってもおかしくはありません。

デジタルカメラやゲーム機内蔵の電話があるくらいですからせめてマニア納得の接続先基地局・周波数・送信出力・受信感度が選べるor表示されるトランシーバー型携帯電話無線機、または携帯電話と新簡易・特小無線機いずれかが2in1な製品も出して欲しい(受注生産でも)と思ってしまう今日この頃です。