2021/01/07

ATS-909X2とATS-909Xスペック比較

 SANGEAN ATS-909X2の製品情報が公式のUSAウェブサイトで公開されました。


ATS-909X2 The Ultimate FM/SW/MW/LW/Air  Multi-Band Receiver - Sangean.com(英語)

 

欧州で発売されているホワイトは北米では発売されず、グラファイト1色が発売されるようです。

ATS-909X2グラファイト(sangean.comから)



このUSA公式サイトの製品情報をひとまず信用することにして、早速ATS-909X2とATS-909Xのスペック比較をしてみます。スペック表に未記載の不足情報は特徴等の情報から拾い出し、追加しました。

表中の緑色はスペックアップ、橙色はスペックダウン(又はその疑いあり)、黄色の「?」は仕様不明を表しています。

いずれの表もクリックで拡大します。



 

仕様をざっと確認したところ大きさや重さに変更はないものの、エアバンドの追加とSSBステップの40Hz->20/10Hz化、LCDの拡大、LED輝度の3段階調整、メモリーの増強といった機能追加があります。

PLLシンセサイザー方式かは正直分かりませんが、ATS-909X2にそのように刻印されているので、たぶんそうなのでしょう。

ブザーの内蔵は不明です。

欧州版ATS-909X2にはリールアンテナが付属するので、この北米版も付属することでしょう。

スピーカーが4Ωに変更された点は本当かどうか怪しいです。

何故なら、北米版ATS-909X2の取扱説明書は本記事作成時点で公開されていませんが、欧州版ATS-909X2の説明書には内蔵スピーカーが8Ωと記載されているためです。

 

機能追加の一方で、スピーカーやヘッドホンの音量低下と入力電流増加の可能性といったマイナス面が見受けられます。

ヘッドホン出力が左右最大1mW+1mWというのは到底実用とは思えないのですが...。

 

帯域幅の設定変更は「自動」のみと思い込んでいましたが、どうやら「自動」に加えて「手動」が追加されたようです。とりあえずひと安心です。

欧州版ATS-909X2の帯域幅切替一覧表が公開されていましたので転載します(クリックで拡大)。

ATS-909X2帯域幅一覧(sangean.euカタログより)


長波とAMラジオは1.8~6kHz、短波は1~4kHzからそれぞれ選べるので、2段階切り替えのATS-909Xからすると、かなりのアップデートと思います。

FMの帯域幅は65kHzから選択できるので、かなりマニアックな使い方ができそうです。



上記の北米版ATS-909X2の製品情報には高解像度の写真もアップされていますので、各部詳細が確認できると思います。

やはり液晶を除き、ATS-909Xと外観はあまり変わらないようです。

ただし、ATS-909Xで本体操作ロックに割り当てられていたボタンがATS-909X2ではプリセットメモリーロック機能となったようです。

 

ATS-909X2のプリセットメモリーロック(左)と本体操作ロック(右)

ATS-909XユーザーはATS-909X2の本体操作ロックがプッシュボタンから側面のメカニカルスイッチへ変更されたことに注意するとよいでしょう。




いよいよ欧州だけでなく北米でもATS-909X2の発売が秒読み段階に入っているようですね。日本の通販サイトに登場するのはいつ頃になるでしょう。

 

そういえばATS-909Xには多種多様なバージョンがあり、日本のFM放送をフルカバーしない製品が多々ありました。

このATS-909X2にも欧州版、北米版の他にロシア版が登場予定とのことです。

ATS-909X2が入手できるようになった暁にはFMバンドが国内のFMラジオをフルカバーするか、購入前に確認するのが無難と思います。

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2021/01/04

欧州版ATS-909X2初期レビューの紹介と考察

swling.comのコメント欄に登場して間もない欧州版ATS-909X2のレビューらしき記載を見つけましたので要約して日本語で紹介します。

SANGEAN ATS-909X2(sangeanshop.euより転載)


Sangean ATS-909X2 Pricing (Europe), Photos, and Product Details The SWLing Post(英語)


Andreja氏のレビューの一部(swling.comから)

2020年12月中旬にATS-909X2の入手を報告したAndreja氏の記載(2020年12月19日付)によると、ATS-909Xとの比較はできないものの、受信感度はTECSUN PL-880と同等で、スピーカーはPL-880のほうが低音が強いと説明しています。

 

 

同氏は同時に、入手したATS-909X2の問題点を8つ挙げています。

よしおはATS-909Xを所持していますので、ATS-909Xの動作と彼のATS-909X2の指摘を1つずつ比較し評価してみます。


1) PL-880よりも内蔵スピーカーの低音が出ない

前述と同じ内容です。ATS-909X2のスピーカーの音質はATS-909Xと同じと思われます。

 

2) エアバンドの8.33kHzステップがなく5kHzと25kHzステップのみ

ATS-909X2には予告通り、エアバンド(航空無線)の受信機能が追加されたようです。

欧州圏のエアバンドのステップは8.33kHzが使われているので、25kHzと5kHzステップでオフステップになってしまう指摘はもっともです。

ATS-909X2の開発者は欧州のエアバンド事情を知らなかったものと思われます。

 

3) SSBとAMで音量差がある。SSBのほうが音量が小さい。SSBからAMに切り替えると音量が爆音となる

この症状はATS-909Xと同じです。

 

4) 表示が100Hzステップなので10Hzや20Hzステップで選局すると厳密な周波数が分からない

予告通りATS-909X2には100Hz表示が追加されたようですが、10Hz表示はないようです。


5) ATSがPL-880ほどよくはない

仕様というか設計思想と思います。


6) バックライトが常時点灯できない(10/20/30秒表示はある)

点灯機能が予告通り拡充されたようです。

 

7) 背面のスタンドが小さく、ラジオを押すとスタンドが倒れる

2箇所のゴム足の存在を含め、スタンドの仕様はATS-909Xと同じようです。

 

8) FMの周波数を入力する時は必ず「.」を押さなければならない。「.」を押さないと短波の周波数と解釈される 

ATS-909Xと同じです。

 

 

 

これらの報告を総合すると、欧州版ATS-909X2ATS-909Xの受信感度と機能の向上を図り、エアバンド受信機能を追加したラジオ(おおよそ事前予告通り)であることがいえるでしょう。

329ユーロを(1ユーロ=130円として)日本円に換算するとおおよそ43000円です。

現時点(2021年1月4日現在)のATS-909X2のレビュー情報とATS-909Xがアマゾンで3万円程度で販売されている状況を考慮すると、受信感度と機能アップ+エアバンド受信機能が本記事記載時点の時価1万3000円に見合うのかという判断になりそうです。

今後はバージョンアップ版や北米仕様、ロシア版等の登場も期待できますので、個人的にはもう少し情報が出てこなければ何とも判断できないというところです。

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2021/01/01

2021年の無線受信の楽しみ方を考える

アナログ業務無線機の使用期限が迫る中、昨年(2020年)は無線のデジタル化が一層加速した年になりました。ここでは2021年の、放送電波以外の受信の方向性を簡単に確認します。 


 

2020年はどんな年だったのか

2020年はよしおの生息地付近の防災無線があっという間にデジタル化してしまい、反響して聞きづらい広報スピーカーから流れる避難情報を市販の受信機では聞けなくなりました。

また、普段の生活で参考にしてきた各種無線のデジタル化もこれまで以上に加速しました。

特にここ数年間によしおの生息地周辺に登場したと思しき新種のデジタル無線は市販のデジタル対応受信機で復調できないものばかりです。

 

2022年以降も聞けるアナログ無線は?

総務省の周波数再編アクションプランに伴い2022年以降、アナログの受信機で受信できるジャンルはおおよそ、ごくわずかの署活系と有事に使用されるごく一部の防災無線、航空無線、一部の船舶無線、アナログ方式のアマチュア無線、一部の特定小電力無線と短波帯以下のアナログ無線に限定されるはずです。

それだけアナログ専用受信機には一層厳しい状況となる現実が目の前に迫っています。 

IC-R6, DJ-X8, VR-160等では全デジタル無線を復調できない



聞けるデジタル無線の種類は

一方でそこそこ聞けるかもしれない(聞けない場合もある)デジタル無線を列挙するならば、一部の業務無線と351MHz帯の簡易業務登録局、467MHz帯の簡易業務免許局、D-STARとC4FM等のアマチュア無線です。詳細は周波数手帳ワイド2020-2021にありますのでそちらを参照ください。

重要無線といわれる警察や消防のデジタル波は市販のデジタル受信機ではまず復調不可能です。加えて屋外スピーカーから流れる同報無線も復調できません。

携帯電話基地局が機能不全に陥ったいくつもの大規模災害の前例を教訓に、せめて同報無線の屋外放送くらいは市販のラジオや受信機で聞けるようにして欲しいものですが...。

少々話が逸れました。種類だけで見るとデジタル化後に聞ける無線は少ないように見えますが、351MHz帯と467MHz帯のデジタル簡易業務全チャンネルが逼迫している現実から察するに、このデジタル簡易業務無線がデジタル無線局数全体に占める割合を上げているはずです。

 

冷静に見れば

ともあれ、結局のところ受信できる無線の種類はデジタル化の推進で少なくなり、アナログ時代には当たり前のように聞けていた業務無線が聞けなくなることに変わりはないので、物足りなく感じる心配は大いにあります。

となると残された受信を楽しむ手段は、聞ける無線だけを集中して追い続けるか、通信内容のわからない電波をひたすら受信し続ける案(下記関連記事参照)等が有力になると思います。

敢えて説明するまでもない事ですが、日本の無線の受信環境はデジタル対応スキャナーが比較的手ごろな価格で買える北米よりもオープンではないということです。

RF ExplorerとAR-DV10を組み合わせデジタル無線の雑音を楽しむ例


 

アナログの終焉とデジタルの本格始動に向けて

今更感はありますが今できることは、聞ける無線は今のうちに聞きまくる、これに尽きるでしょう。具体的には聞ける無線の周波数のスキャンや受信機を増やしたりアンテナを増強するくらいでしょうか。

これから先、聞ける無線以外に手を広げるのならば通話内容のわからない無線電波をひたすら見つけて楽しむバイタリティがなければ受信という趣味をやってられないような気もします(笑)

(関連記事はこの下です)


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