2019/09/29

ラックスマン製真空管FMチューナー・キットの組立

音楽之友社が9月21日に発売したONTOMO MOOK、電波を受信せよ!真空管FMチューナーのキットが発売されたので早速購入し、組立てました。
電波を受信せよ!真空管FMチューナーキット

この真空管FMチューナーの設計を監修したラックスマンというメーカーは高価なオーディオアンプなどを作る会社のひとつで、オーディオマニアから高い支持を得ています。


■組立

前置きはこの程度にして、早速パーツ構成をチェックしましょう。

付属品は金属ケース、チューナー基板、ネジ、ツマミ類、ワイヤーアンテナ、ACアダプター、真空管12AU7などです。



組立てにはプラスドライバーとラジオペンチが必要ですが、やや力が要るので工具の選び方を誤ると部品を壊したり、工具が壊れたり、組立の苦労が倍になる場合があります(組立説明書にも一部注意書きがあります)。

本キットをより簡単に組立てられる、比較的安価で使い勝手の良いドライバーとラジオペンチの一例を下記リンクに載せましたので、不安な方はご活用ください。






■動作

組立て後、動作中の真空管FMチューナーキットの完成形です。
真空管FMチューナーLXV-OT8キット動作例

本体は反射を抑えた凹凸のある落ち着いたパールホワイトで高級感があります。

チューナーの奥で真空管12AU7がジワリと光っています。


操作系は電源スイッチ、選局ダイヤル、FM WIDE SELECTOR(ワイドFM切替)ボタンの3つだけです。

正面に取付けたアルミ削り出しに見える、高級感のあるダイヤルを回し選局します。

ワイドFMはFM WIDE SELECTORボタンを押すと切替ります。

同調ランプ、ステレオインジケーター、ワイドFM受信中ランプが光ります。



■受信感度

ラジオの受信感度はアンテナにもよりますが、付属のワイヤーアンテナを使ってもなかなか良いです。

よしおは外部アンテナを使用して受信しましたが、高性能といわれているポータブルラジオXHDATA D-808を含むDSPラジオと同等の感度が出ていると思いました。



■音質

この真空管FMチューナーLXV-OT8キットの音声出力はピンジャック式ラインアウトのみのため、アンプとスピーカーが別に必要です。ここが普通のラジオと据置型チューナーとの違いですね。

ステレオ感は何となく最近のポータブルFMステレオラジオよりもわずかに少ないものの、高音を含むつややかさが何となくキラリと光る感じです。

アンプとスピーカーで音が大きく変化するので説明しづらいですが、何度も使っていると、もう少し聞いていたくなります。


- + - + - + - + - + -


この真空管FMチューナーLXV-OT8のキットは質感もさることながら、キットにもかかわらず高品質なパーツを多用しているため、個人的には満足感が高いと思いました。

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2019/09/17

中部国際空港CENTRAIRでTETRA波探し

ファーム1904Bを入れたAR-DV10を持参し、中部国際空港のTETRA電波が受信できるか確認してきました。ここではその状況をいくつか語ります。
今回持参した機材(AR-DV10とモバイル電源)


中部国際空港にはTETRA無線網が7月に導入されたと言われています。

PCレスで使えるTETRA対応の民生用受信機は本記事を書いている現在、AORのAR-DV1AR-DV10だけです。今回は利便性を考え、ハンディ機AR-DV10を持参しました。



まずは本当にTETRAが使われているか、電波を確認します。

AR-DV10で周波数を合わせると、空港へ近づくにつれてTETRAの電波が強くなるのが分かります。
展望デッキでTETRA受信(一部加工済)

結局ターミナル屋内で確認した波は全部で10波以下。確かにTETRAが動作している事を確認しました。

このうち数波は空港の離島から離れた陸地でも強力に受信できました。空港外での使用も想定しているようです。

駐車場でモトローラのST7000が使用されているのを確認できました。

モトローラのST7000はコンパクトながら1.8ワットの中出力でGPS、Bluetooth、デュアルマイク、緊急時USB-Cタイプの充電に対応した、ある意味無線機らしくない最新端末です。

1.8ワットという中程度の出力で、どの程度空港島から離れて使えるのか、興味がありますね。



次に、実際に復調音を聞いた感想をいくつか挙げてみます。

リアルタイムにAR-DV10本体スピーカーを耳にぴったりとあて受信したTETRAの復調音は、351MHz帯の簡易無線よりもモコモコしておらず、意外にクリアでした。要は第2世代携帯電話に近いです。

一方で351MHzのデジタル簡易無線ではバックノイズが効果的にカットされますが、TETRAは機械音や風切音といった、それなりに大きなバックノイズが入ります。

よって、騒音のうるさい場所で、小声で話されると聞きづらいことがあります。

また、少ないとはいえ、デジタル特有のモコモコ音により、送信者がはっきり喋る訓練をしていないと何を話しているか分からず困惑する場合があり、無線機の使用者側にも慣れが必要な印象でした。

ごく稀に復調エラーと思われる、ピーというノイズが入りました。AR-DV10の問題なのか、無線機の問題なのかは分かりません。

もう1つの気になったことですが、大きい音が連続して入るとマイクの音声レベルが小さくなり、その後に音が小さくなってもマイクの音声レベルは交信が終わるまで小さいままでした。
これもAR-DV10が原因なのか、無線機側が原因なのかは分かりません。

録音したファイルを再生するとAR-DV10本体では聞こえなかった折返し雑音?が聞こえ、一昔前のICレコーダーを再生しているようです。これも受信機起因なのかTETRA特有なのかは分かりません。



最後にAR-DV10を使って気になった1904BファームのTETRA復調時の挙動を挙げてみます。
AR-DV10でTETRA受信(一部加工済)

TETRAは1波で理論上最大4人の通話が同時にできますが、AR-DV10ではデフォルトのスロット自動選択に設定すると、スロット2だけしか受信していないように見えました。

実際は別スロットを受信してもAR-DV10では2しか表示できなのか、受信機がスロット2だけしか受信できないのか、実際の音声通話がスロット2だけでしか行われていないのか、真相は分かりませんでした。

2エリアだから2に固定している…のでしょうか(笑)



今回は誤ってLOG機能を設定せず持参したため、 LOGEXTRACTでは録音したファイルのログデーターを開けませんでしたが、ひとまず中部国際空港でTETRAの使用だけでも確認できたのは収穫でした。

機会があればスキャンが可能なAR-DV1も持参し、アンテナの確認やスロットを手動に切替えて中部国際空港での受信に再チャレンジしたいところです。

それにしても、AR-DV10がここまで使えるとなると、もう1台買うべきか悩みますね。
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AORの新型受信機AR5700DとAR7400@ハムフェア2019

2019年のハムフェアが無事に終わりました。ここではAORブースに展示されていた新型受信機AR5700DとAR7400の話題を取り上げます。
ハムフェア2019のAORブースの一部


■AR5700D

AOR AR5700D受信機

AR5700Dは9kHz~3700MHzをカバーするデジタル復調対応のデスクトップ型広帯域受信機です。

ごく一部のデジタル通信とアナログ通信がオールモードで受信できます。

AR5001Dの後継機の位置づけとのことです。



GPSオプションとアンテナ切替器もAR5700D専用のものが登場予定です。

AR5001Dのオプションは端子が異なるなどの理由で使用不可のようです。

AR5001D同様にFMラジオがステレオが聞けます。

録音ファイルはAR5001D譲りで、録音開始から停止まで分割されません。

背面はご覧の通りです。

発売は今年中、価格は50万円近くになる予定です。
付属ソフトウェアAR-IQ-IIIによるAR5700Dデモ


まだ発売前なので判断は時期尚早ですが、AR5700Dのアドバンテージはカタログスペックだけで見ると、受信精度と受信範囲、少し充実した液晶表示、I/Q出力を含むPC連携といったところで、それ以外はAR-DV1と大体同じに見えます。

極論かもしれませんが、受信できるデジタルの電波が同じならばAR-DV1でいいじゃないかという判断になるのは自然と思います。





■AR7400

AOR AR7400(コンセプトモデル)

AR7400はV/Uエアバンドを4波同時受信可能な航空無線専用受信機です。

航空無線の周波数ではAMモード固定受信となります。加えてFMラジオも受信可能です。


色は違えど外観は一見AR-DV1と同じですが、スピーカーの大きさや配置、奥行きが異なります。AR-DV1と比べるとスピーカーは大きく、奥行きは1/4ほど短くなっています。

4波同時受信では音量とスケルチを独立設定できます。

4つの独立したスピーカー出力端子が裏面にあります。

UHFとVHFのエアバンドを、従来の受信感度を保ち1秒でサーチするという驚異的な爆速性能を持つことは確かなようです。

FMラジオの4波同時受信は現在考えられていません。I/Q出力も考えていないとのことです。

4波同時受信中の録音フォーマットも未定です。4トラック1ファイル録音か、モノラルWAVの4重同時録音になるのかもしれません。

ほぼ確実なのはAR5700D同様に、こちらもファイル分割録音機能がないことでしょう。

本体の発熱はAR-DV1と同じくらいでした。

今回登場したAR7400はあくまでもコンセプトモデルです。外観はほぼこれで確定ですが、内部仕様は今後変更となる可能性があります。

VHF航空無線の受信範囲上限が137MHz止まりの現状も、いずれ142MHzまで拡張されるはずです。


よしおがAR7400に望むことは、やはり市販の受信機4台を集めるだけではできない機能の充実です。

例えば4波同時受信で全て同じ範囲をサーチorスキャンするときに、1つの受信機がある周波数を受信中、残り3台の受信機は現在受信中の周波数を自動スキップする、という機能があると便利と思いました。

同時受信機能があっても、同じ周波数を受信してしまうと同時受信の意味がないですから...。

ハムフェア2019のAORブース イメージガール


AR5700Dに引き続き、AR7400までもがファイル分割録音を装備しないであろう理由として、恐らく政治的or技術的に何らかの事情があるのではと思います。

もし、自分で金太郎飴をぶつ切りにしなくても良い録音機能か、復調できるジャンルの増加のどちらか片方を選ぶならば、よしおは後者を選ぶでしょうね。

とはいいますが、ファイルの分割録音機能はやはり欲しいものです。
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