2013/05/29

【追記】アルインコDJ-X81雑感

アルインコの新型受信機DJ-X81を入手して数日が過ぎました。ここでは個人的に感じたDJ-X81の使用感を書いてみます。DJ-X81の使い方についてはラジオライフ(2013年)7月号にわかりやすくまとめてありますのでそちらを入手してください。

なおDJ-X81の売りであるはずの緊急放送受信に関する内容はここでは割愛します。
(2013/6/8追記:下の「関連記事」にEEWとEWSのお試し受信についてリンクを追加しました)


まずは最も重要視するDJ-X81の外観から。

DJ-X81はDJ-X8からキーボード交換用ネジによるレトロ感演出?やキーボード全体の不思議なV字テイストが消え、スッキリした印象です。しかし側面の質感(ボタン形状や作り)が正面とあまりにも違っていて少々ショックでした。実勢価格が2万円台という激安では仕方ないのかもしれません。

気になる本体の厚みですが単三乾電池1.5本以上の幅があり、ポケットに入れたりネックバンドで首からぶら下げ気軽に持ち運ぶ使い方は難しく、ベルトクリップ運用が適切です。スマートフォンを見慣れてしまっているせいか、もっと薄くてもいいのではと思ってしまいました。

フル充電に10時間掛かるという20年前水準のスペックは最初使いづらいと思っていましたが、いざ使い始めると日常それほど使いづらくはない印象でした。

電池の持ちですが、付属充電池の充放電を繰り返したところ緊急放送受信状態で1日1時間程度ラジオ受信に使うと約1.5日は持つようです。



充電スタンドについて。

付属の充電スタンドはDJ-X8充電中の様子がまるで湯船につかっているような愛嬌のある形状からDJ-X81ではソファーに腰掛けた重役用の椅子のようなイメージの形状に変わりました。

充電中ランプ(赤)は好みに応じて入切できます。

DJ-X81が少し斜め状態で充電スタンドに固定されるのは表示が見やすく使いやすいです。DJ-X8ゆずりの充電スタンドの周囲を取り囲む厚みは受信機が倒れないようにする工夫でしょうか。



充電スタンド/外部電源入力端子を使った受信について。

満充電後、ACアダプタを外さず充電スタンドへDJ-X81を置いたまま電源を入れると、満充電状態にもかかわらずDJ-X81がさらに10時間充電しようと充電タイマーが再びカウントダウンを始めました。充電池の満充電状態検出機能はないようです。

また電池を入れずACアダプタをDJ-X81の外部電源入力DCジャックへ差し込むと、電池が入っていないにもかかわらず液晶の電池交換表示が点滅し始め、充電動作だけが開始されます(セットモードの「外部DC端子の充電機能設定」でON-LED設定するとよく分かります)。ただしこの動作はセットモードで回避できました。



次に現行品DJ-X8からの主な不満点の解消チェックです。

◇充電端子の接触不良による充電タイマーリセット
DJ-X81では充電端子形状などがDJ-X8から変更され、接触不良は現状認められません。解消されていると考えていいでしょう。

◇空線信号のキャンセル性能
残念ながらJR隣接周波数の抑圧に関しては未チェック(5/31追記:キャンセル効果発揮を確認しました)ですが、同じ周波数の電波を複数受ける(フェージング状態)と空線信号がキャンセルされないことがありました。DJ-X8から改善されていないかもしれません(5/31追記:ある程度は改善されていると思います)。

◇混変調、イメージ受信
テレビ放送の混変調の影響はデジタル化された影響のせいか今のところ遭遇していません(5/31追記:NTT塔下でJR列車無線が移動警電のカブリを受けました)。しかしそれほど強くない電波のイメージ受信はありました。具体的には350MHz帯の移動警電基地局や360MHz帯署活系が+487.9MHz離れた840MHz帯で見つかる、などです。



DJ-X81の各種放送電波受信についてざっくりと。

AMラジオ、FMラジオについては相変わらず市販のラジオと互角の性能か専用機クラスに匹敵すると思います。付属のアンテナでも特に感度不足は感じません。環境によりますがダイヤモンドアンテナのSRH805SでもNHK-FMがギリギリ受信出来ました。

ワンセグ音声は付属アンテナでは高感度で受信できますがダイヤモンドアンテナ(第一電波工業)のSRH805Sでは今のところ、ワンセグ携帯電話で受信できる屋内と屋外で受信できません。逆にコメットアンテナのSMA-W100RXではロッドアンテナを伸ばさなくても余裕で受信出来ました。

手持ちのヘッドホンでイヤホンアンテナ機能も試しました。結果、400MHz帯ではSRH805Sのほうが高感度でした。使うイヤホンや受信周波数にもよるので一概に判断できません。

気になっていたワンセグ音声の受信遅延はワンセグテレビと僅差で甲乙つけがたいです。ただ、チャンネルを切り替えた直後に音声が出る速さはDJ-X81のほうが映像デコード不要な分、2~3秒速く再生し始め好印象です。



DJ-X81を受信機として使った場合の感想等をいくつか。

スキャン、サーチ速度に不満はありません。1~5段階から選べます。

交信終了直後からスケルチ動作までに一瞬聞こえるザッという雑音の長さは今まで使ってきた無線機や受信機の中で長いほうです。

VFOスキャンのオートモード時のステップやモードの切り替わりで0.5秒ほど、プログラムスキャンで上端下端に差し掛かると約0.5秒、それぞれフリーズします。

セットモード操作中は受信音量の調整ができません。

DJ-X81内蔵スピーカーの音質はかなり聞き取りやすいのですがイヤホンを使うとホワイトノイズの音量が大きく、音質をLOWにしてもホワイトノイズだけは変化しません。

スケルチオープン時一瞬出る「ボッ」というポップノイズはDJ-X8やDJ-X11同様健在で、スケルチ開閉が断続すると耳が痛いです(5/31追記:改めて確認したところ普通レベルでした)。別売りケーブルリモコンEDS-12を使えば解消するのかは未確認です。このポップノイズは同社特定小電力トランシーバーではかなり解消していますので、受信機でもぜひ改善して欲しいですね。
(5/31追記:同じイヤホンで改めて確認したところ他社機種と遜色ないくらいのポップノイズレベルでした。使い続けると馴染んでくるのでしょうか・・・?)

受信感度は全体的にDJ-X8同様、このクラスでは申し分ないと思います。



裏ネタを少々。個体差かもしれませんが、内蔵の音声反転秘話解読機能らしき設定はキャリア漏れが多く実用的ではありません。

そもそもこの設定は説明書になく、公式の機能ではないと思われますのでメーカーへの問い合わせはご遠慮ください。これ以上詳しくは語りません。ご自身で研究されてください。





駆け足でDJ-X81を使い気づいたことを書き連ねました。DJ-X81をある程度使った全体の感想を一言で言うならば、「・・・」です。

期待以上の部分もあれば今まで当たり前と考えていた受信機の常識が・・・な部分も散見され、ある意味バランスのとれた1台です。

終始気になったのは操作のしづらさと液晶表示文字が何を表しているのかほとんどわからないことでした。特にセットモードに現れる液晶表示の「n」と「m」に違いがなく読み辛いです。



DJ-X81の説明書は戸惑いました。例えば「ダイヤルを回す」と言葉だけが書いてあるDJ-X81の説明書は図が足りず、上のダイヤルか下のダイヤルのどちらを回せばよいのか1時間ほど悩みました。説明書の最初をもう一度見なおし、下のダイヤルが「リング」と呼ぶことを初めて知り解決しました。

また、箱出し状態のときワンセグの地域選択画面で説明書に記載のない「******」が現れた時はかなり慌てましたが、いろいろ触っているうちに説明書通りの動作になりました。

DJ-X81が緊急放送受信対応と宣伝されているにもかかわらず、取扱説明書にはまるでオプション機能のような扱いで掲載されている状況はとても不思議に思いました。仮にもし、よしお自身が説明書を作る立場になっていたとしたら、緊急放送受信設定の説明をページのもっと始め付近に持ってくるかもしれません。




このようにDJ-X81実機を毎日使っていますと、DJ-X81はやはり受信機を知る中級者向けではないかと思えて来ました。前記事「アルインコDJ-X81考察」(下の関連記事参照)で考えた、初心者ユーザーもターゲットに入っているのでは?という予想はどうやら外れだったようです。

いろいろ書いていたらずいぶん長くなってしまいました。ここまでお読みいただいた方、本当にありがとうございました。

以上、緊急放送受信を除いたDJ-X81使用レポートでした。



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[関連記事]
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【追記】アルインコDJ-X81開封インプレッション

アルインコDJ-X81考察

緊急地震速報,緊急警報放送,ワンセグ対応ラジオ一覧

卓上ライトの製作~輪番停電に向けて

2013/05/25

GRE、中国再開発により工場閉鎖

昨年(2012年)の話題ですがGRE(ゼネラルリサーチオブエレクトロニクス)の中国(中華人民共和国)にある工場が中国政府の再開発により強制的に閉鎖させられたとのことです。

・GRE America Inc. Press Release - GRE America

恐縮ですが説明の核心と思われる最も長い部分を日本語訳します。

"GREの工場が10年以上操業し続けた地域を再開発するという中国政府の計画によって、ついに我々の工場が強制的に閉鎖させられました。この不測の事態を避けるため、我々GREは新工場の建設を進めようとしてまいりましたが、不幸にも原料や労働コストそして増税が事実上採算の合わない重い投資の負担となりました。"


テレビで放映されているような中国の“立ち退き”がついにGREの工場にまで波及したようです。これにより予定されていた最新のモービル受信機PSR-900は現在生産の目処が立っていないと思われます。

本プレスリリース全体からはGREが委託生産も視野に入れて受信機の生産再開のため日夜動いているだろうことが読み取れます。

GREブランドの製品は残念ながら国内ではほとんど一般に広く流通しておらず、私たちはただ頑張れとしか言えませんがGREの動きを注視することはできるはずです。GREへの注目がGREや周囲の励みとなり、今後の生産再開につながるかもしれません。


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[関連記事]
・GRE、P25デジタル復調対応の次世代受信機

2013/05/23

FRC、GPS搭載2波同時受信受信機

株式会社エフ・アール・シーから異色なコンセプトの受信機が発表されました。

GPS搭載ワイドバンドレシーバー FC-S789 - 株式会社エフ・アール・シー FRC



現行品FC-S117からのバージョンアップ等の内容を挙げます。

・ドライブモード(速度取締機の接近を音声でお知らせ)
・770-1300MHz受信
・2波同時受信
・チャンネルメモリー:400ch -> 800ch
・GPS内蔵
・USB端子(LOGデータ出力)
・録音、再生機能
・本体厚み:36mm -> 39.5mm
・待機時消費電流:70mA -> 130mA
・本体質量:147g -> 154g



なお商品説明からはFC-S789の追加機能かを判断できない機能は以下です。

・検問モード
・盗聴電波専用エリア

これらはFC-S117にも搭載されているかもしれません。





商品説明を見る限り、個人的に受けた感想は受信機を限りなくGPSレーダー探知機に近づけたのではというものでした。

ご存知のようにGPS搭載無線機はID-51VX-8GFT1DTH-D72などのように各社から発売されていますが、受信機にGPSが内蔵されたタイプとしては確かに世界初かもしれません。

ユニデンのBCD396XTでさえ位置情報ベース受信機能は外付けGPSを接続することで初めて機能します。敢えて速度取締の警報用にGPSを使いエリア限定受信機能を搭載する発想は、これまで出そうで出なかったであろう画期的なものと思います。

また付け加えるならば、FC-S789のGPSレーダー探知機能と65~70MHz帯の同報無線受信機能は他社の同等性能を持つ受信機と差別化できる強力なアピールポイントです。





受信機ということで2波同時受信性能や2波同時受信特有の制約(BバンドのWFM受信やイメージ受信)など、気になることは多々あります。またUSB端子からLOGデータ出力可能とのことですが、録音データもパソコンへ転送できるのかという疑問も自然とわいてきます。

今回発表されたエフ・アール・シーのFC-S789はアルインコDJ-X81のワンセグ音声受信&緊急放送受信機能のように、久しぶりにワクワクする受信機と思いました。




[関連記事]
アルインコDJ-X81開封インプレッション

アルインコDJ-X81考察

2013/05/22

【追記】アルインコ DJ-X81開封インプレッション

久しぶりに受信機を買いました。先日アルインコから発表のあった、緊急地震速報・緊急警報放送・ワンセグ音声が受信できるDJ-X81です。

これまでのアルインコ製品と比べ、デザインが随分向上したと思ったことや気軽に持ち運びでき緊急放送対応では現状最高スペックのラジオということで選びました。



さっそく開封した中身をご覧に入れましょう。


液晶はハイエンド機には及ばないものの、比較的大きめです。DJ-X8の液晶を流用していると思いましたが、緊急放送動作表示があるのでDJ-X81用に作りなおしたものと考えます。
(2013/6/8追記:改めて確認したところ液晶表示はDJ-X8と同じでした。内部も100%同じではないかもしれませんが、少なくとも表示に関してDJ-X81とDJ-X8で違いは確認できませんでした)



本体裏の上の方に長さ5センチほどの長波~中波用バーアンテナがあります。右のシールドされた中身はワンセグ受信用の局発などでしょうか。



バーアンテナの裏基板にはFMラジオ受信チップがありました。このチップはFMステレオ対応ですので、改造することでステレオ受信ができると思います。

ただしこのチップが緊急地震速報用/緊急警報放送用なのか、あるいはFMラジオ受信時に動作するのかはわかりません。





DJ-X81の真裏の様子です。手のひらに面する部分ですね。シールド部分が受信機本体のVCOかと。カタログスペックはDJ-X8と同じですから、回路構成もDJ-X8と同じではないでしょうか。



見ているだけではあまり意味がありませんので次はDJ-X81の電源を入れます。

電源ボタンを数秒押すとDJ-X81の文字が現れ手持ちのDJ-P23特定小電力トランシーバーと同じ起動音、ボタン操作音がしました。無線機と受信機の違いはあれ、きっと開発環境が同じなのでしょう。

FMラジオ、AMともに市販のラジオに匹敵するほどの感度を有していると思います。ワンセグ音声もチャンネルを切り替えると2~3秒後に音声を出すキビキビした動作をしてくれました。



無線通信の受信テストをします。ミヨシの特定小電力トランシーバーTCV-01から電波を送信しました。

DJ-X81も音質調整がHi/Low2段階できるのですがLowのままでも十分内蔵スピーカーで豊かな音が出ます。ラジオ、無線どちらも聞き取りやすいと思います。

スキャンスピードはVFO、12.5kHzステップのNFMで毎秒80ステップでした。アイコムIC-R6やユピテルMVT-7500/MVT-5500に匹敵する高速性能です。





・・・とまあ、ついうっかり、好奇心のままにDJ-X81の行き過ぎた開封をしましたがボケはここまでとし、入手したDJ-X81の初めての感触をまとめます。

感度:○
音質:○
携帯性:△
操作性:△
質感:△

詳細と上記以外の項目は下の関連記事を参照ください。


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[関連記事]
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2013/05/20

【追記】デイトンハムベンション2013総括

今年(2013年)のデイトンハムベンションが終了しました。

今回も直接現地へ出向くことはできませんでしたが、特に気になったニュースを挙げてみます。





今年はそれほど目立った新製品発表は行われなかったようです。
(5/21追記:東京ハイパワーのXT-751を加筆しました)

●アイコムブース:
IC-7100ID-51のデモが行われたようです。生中継されていた講演をUSTREAMを見たところD-RATSに関する内容を説明していました。


●JVCケンウッドブース:
日本でも今年(2013年)発売されたTS-990のデモが行われていたようです。


●八重洲ブース:
未発売の、FTDX3000の廉価版であろう位置づけのFTDX1200が初公開されていました。
(※FTDX1200とFTDX3000の違いは本ページ下の[関連記事]でも紹介しています)


●エレクラフトブース:
2011年に小型ポータブルオールモード機を発表した同社からはK3(KX3ではなく)をインターネットを介して遠隔操作可能な、K3/0の小型版となるK3/0 miniが発表されました。

LAN接続なのかWAN接続かは分かりませんが、KX3と同じ大きさのコントローラで遠隔地のK3をパソコン画面上ではなく、あたかも本体操作部を切り離したかのような感覚で操作可能とするデバイスだそうです。

K3/0 miniとインターネット有線接続環境さえあればどこからでも自宅のK3が想いのままに操れる、いいですね。


●東京ハイパワー(5/21追記)
7MHz~50MHzを5WのSSB/CWでカバーするハンディ機、XT-751の試作品らしき筐体が展示されていたようです。エレクラフトのKX3同様、内部ATU(オートマチックアンテナチューナー)搭載! すごいですね。

東京ハイパワーといえば前作の7MHz/21MHz/50MHzハンディ機HT-750が記憶に新しいと思います。最大出力が3Wだそうでしたから、XT-751はHT-750の性能向上版でしょう。

HT-750のバッテリーシステムは単3乾電池を8本必要とする、リチウムイオン全盛の現代では少々時代遅れと言えなくもありませんので、出来ればXT-751ではバッテリーシステムも頑張っていただきたいところです。HT-750以上に周波数をカバーしていると更に期待大ですね。

XT-751の発売は2014年ごろを予定しているそうです。国内での発売予定も気になります。




以上、2013年の気になるデイトンハムベンションの様子を実にさらりとまとめました。



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[関連記事]
八重洲無線、海外でFTDX1200シリーズ発表

八重洲、海外で新モノバンドハンディFT-25x発売か

電池駆動できる超小型HFポータブル機 - KX3

【更新】デイトンハムベンション2011続報

2013/05/19

八重洲無線、海外でFTDX1200シリーズ発表

FT-252とFT-257がまもなく発売されるであろう八重洲無線から、事実であれば今度はHF/6m固定機の新製品が追加されるかもしれません。

今年(2013年)のデイトンハムベンションの八重洲ブースにはこのFTDX1200とFTDX3000が展示されているようです。

たしか2012年にFTDX3000が発売されたばかりですがこのタイミングでまさかのHFと50MHz固定機の登場・・・。外観がFTDX3000と極めてよく似ているFTDX1200ですのでその違いは独立周波数表示ディスプレイの有無だけではないかという疑惑があります。

カタログスペックでFTDX1200とFTDX3000を比較します。以下は両者のスペック上異なる部分のみ抜き出したものです。

上記表の"o"は該当する機能があることを、"x"はないことを示します。"不明"についてはカタログに記載が見当たらなかったため不明としました。



このようにスペックを俯瞰しますと、おどろくべきことに消費電流や本体の大きさはFTDX1200とFTDX3000で変わっていないことに気が付きます。

FTDX1200のほうが500グラムFTDX3000よりも軽いですが、恐らくAF-FFT(送受信音声のスペアナ)機能やUSB端子機能がオプションとなっていることなどによるものと推測できます。

送信スペックはFTDX1200、FTDX3000ともに同じ。アンテナコネクタがFTDX1200ではFTDX3000の3端子から2端子に変更されています。




FTDX3000の海外での定価がおよそ40万円で今回のFTDX1200の想定定価が27万円程度。日本で発売されることになれば、おそらく実売で20万円を切ることが予想されます。

以上のことから、FTDX1200は導入価格を抑えたFTDX3000の機能厳選版ととらえることができます。必要に応じてユーザーが機能拡張を行うことができるため、発売されればFTDX3000の高性能をほぼそのままに初期費用を10万円も!安く抑えられるメリットがありそうです。

逆にFTDX1200への全オプション追加をお考えでしたら最初からFTDX3000を入手する選択が価格面で有利と思います。

さて、こうなると比較的同じ価格帯のFT-950がどのような位置づけとなるのかが気になります。しかしこればかりはFTDX1200が国内で発売されなければ分かりません。個人的にはFT-950のデザインに一票を投じたいところですが性能面ではDSPによるシャープなフィルタ性能を持つFTDX1200が圧倒的です。

これからHF機導入を検討されている方にとってFTDX1200発表のニュースは見た目を取るか性能を優先するか、あるいはこの際思い切ってFTDX3000を選択するべきか・・・また一つ、うれしい悩みが増えそうですね。



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[関連記事]
八重洲、海外で新モノバンドハンディFT-25x発売か

Vスタンダード 日本語表示可能なデジアナ簡易業務機

【更新】デイトンハムベンション2011続報

電池駆動できる超小型HFポータブル機 - KX3

2013/05/15

【訂正】AORアメリカからAR8200D登場

AORアメリカがAR8200Dなる製品をアメリカを主要国とする海外でアメリカ時間の2012年9月5日にリリースしています。

For more details, check out the manual for AR8200D! - AOR, LTD.


オーストラリアのある販売店ではAR8200D初期ロットが3月に完売となっていました。



上記リンク先にあるとおり、AR8200DはAR8200MK3のアップグレード版という位置づけです。

具体的なアップグレード項目は
● APCO25復調
● オプションカードレスのトーンスケルチ(グループモード)デコード
● オプションカードレスWAVフォーマット音声録音
● オプションカードレス音声反転型秘話解読機能
● USBインターフェース
です。





AR8200MK3とAR8200Dの違いについて、順を追って見ていきましょう。


> ● APCO25復調
APCO25ではAMBE+2のコーデックも使われています。
これは国内で使用されている351MHz帯の登録局や簡易デジタル業務(以下、デジ簡)復調の可能性を示唆しています。
(2013/5/22訂正:AMBEはAPCO25では開発中で、現状はIMBEのみ使用されているため、AR8200Dでは国内の351MHz帯の登録局や簡易デジタル業務は復調不可と思われます)

2012年ハムフェアのAORブースで351MHz登録局無線復調のデモンストレーションを行なっていたことは記憶に新しいと思いますが、それがハンディ機でも実現する可能性が高いということです。もしかするとAR8200Dでデジ簡が復調可能かもしれません(未確認)。
(2013/5/22訂正:APCO25のコーデックは現状IMBEのためAMBE使用の国内のデジタル無線は復調不可と思われます)


> ● オプションカードレスのトーンスケルチ(グループモード)デコード
AR8200DではオプションカードCT8200が不要となります。



> ● オプションカードレスWAVフォーマット音声録音
AR8200Dは本体でサンプリング周波数18kHz 16ビットの非圧縮音声がマイクロSD/SDHCカードへ録音可能です。

加えて録音した内容の本体再生も可能となっています。これによりレコーディングカードRU8200が不要となります。
ただしスケルチ連動録音機能はサポートされず、手動で録音開始・停止のボタン操作となります。



> ● オプションカードレス音声反転型秘話解読機能
AR8200Dアメリカ司法機関向けモデルは音声反転型秘話解読調整が可能です。オプションカードVI8200は不要となります。



> ● USBインターフェース追加
AR8200Dの底部には新たにマイクロSD/SDHCカードスロットとUSB端子が追加されます。

これにより外部メモリカードEM8200、トーンエリミネータカードTE8200が使用不可となる一方パソコンとAR8200DとのUSB直接接続が実現します。



以上の変更に伴いAR8200MK3のオプションカードイジェクトツマミが録音停止ボタンと動作ランプに換装されます。これは即ち、すべてのオプションカードの使用不可を示唆しています。

オプションカードTE8200が使えなくなる一方でトーンエリミネータカードに相当する機能追加の言及は特にありません。想像ですが鉄道無線の空線信号が現在海外で流通しているAR8200Dでは除去できないようです。





このようにAR8200DはAR8200MK3の受信性能にデジタル復調機能を追加しPCとの親和性を高めたAR8200MK3のアップグレード品との位置づけですが、個人的な感想としては外観が同じであってもオプションカードが使えない状況からアルインコのDJ-X8とDJ-X81の違いのように新製品と見るのが妥当と考えています。

2013年5月現在AR8200Dは海外のみの取り扱いとなっており国内では入手困難です。また、これもAORアメリカ限定ですがシリアルナンバーが05xxxx、055xxx、15xxxxの個体に限り、手持ちのAR8200MK3をAR8200Dにアップグレードするサービスを行うそうです。

日本のAORからの公式発表は2013年5月現在まだありませんから、お手持ちのAR8200MK3の改造を国内のAORへ依頼しても実現しないでしょう。

どうしても・・・という方はまず05xxxx、055xxx、15xxxxシリアルナンバーを持つ、アメリカで販売されているAR8200MK3を用意しましょう。
そしてこちらに記載されています内容に同意しアップグレード費用約3万円と往復送料&関税手続き等を覚悟の上、アメリカのAORに(もちろん英語で)連絡されてはいかがでしょうか。アップグレードが受けられるかもしれません。


いずれ国内でもアメリカのAR8200Dそのものか、それに類する(デジ簡と空線信号に対応する)製品の発表もあり得ます。

まずは落ち着いて今後の動向を見守ろうではありませんか。




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[関連記事]
AOR、AR6000発表
アルインコDJ-X81考察
AMBE+2とは~無線用語

2013/05/12

トランシーバー内蔵ドッキングスマホケース


ウソかマコトか、スマートフォンの画面で操作可能な、トランシーバーモジュールを内蔵したドッキングケースの開発プロジェクトがアメリカで進行中という話題です。

Smartphone Docking Walkie-Talkie - Alianza DXB



シリコンケースやプラスチックケース、革キャリングケースなどをつけてスマートフォンをお使いの方がいらっしゃると思いますが、このプロジェクトで開発予定の製品は、そのケース内にトランシーバーモジュールを装備し、そのトランシーバーモジュール入りのケースにiPhoneなどスマホを装着することでトランシーバー、つまり無線機として使用可能とするものだそうです。発想はとてもユニークだと思いました。

試作機と称する物の製品は上記サイトに写真掲載されています。予定ではiPhone5/4s/4、ブラックベリーZ10やアンドロイド端末への装着を実現するようです。



このプロジェクト提案元のBricom Solutionsは現在開発費用として寄付を30万ドル募った後、プロジェクトを進めようとしているようですが、その寄付の目標額となるまでの期限が(この記事を書いている現在は)あと数日に迫っています。

寄付を募っているサイトがこちらです(上記サイトのリンクをたどるとこちらにたどり着けます)。

DXB  Walkie-Talkie dock for iPhone Android Blackberry & WM by Bricom Solutions — Kickstarter



このプロジェクトの詳細を見れば見るほど、トランシーバー内蔵ドッキングスマホケースが本当に実現可能なのか、心配になってきます。最も心配な具体例として以下があります。

・電池の問題 - 最大6Wで送信するには外付けバッテリーが必要。2Wなら可能かも
・スマホとの連携 - USB接続かBluetooth4.0でスマホと通信?
・大きさ - スピーカーや端子、ツマミ、電池、基板をスマホに付け巨大化したら携帯不可?
・防水等 - iPhone5など多数のスマホは防水ではないので故障時スマホメーカー保証外?

と、心配ばかり羅列してしまいましたが、それだけ個人的な期待が大きいと考えてください。



果たして寄付が集まるのか、また寄付が無事に集まった後に開発が始まり、記載されているとおりたった8ヶ月で製品開発が完了し、今年2013年の年末に製品が出荷できるのか、とにかく期待しましょう。

2013/05/11

【更新】AOR、AR6000発表

ハムフェア2012でお披露目されていたAR6000がついにメーカーから公式に発表されました。

Super Wide-band Multi-mode Receiver AR6000 - AOR(pdfファイル)



海外向けには最終仕様ではなかったものの、今年2月には先行アナウンスされていました。

http://www.aorja.com/receivers/pdf/AR6000_temporary_brochure.html

なおAORアメリカのAR6000のカタログには受信周波数範囲が40kHzからと記載がありました。アメリカ、イギリスなどの海外では既に40kHz~6GHz受信のAR6000が既に出回っているようです。お国の事情でしょうか。
(2013/7/14追記:海外仕様のAR6000も9kHz~対応であることが2013/5/29公式アナウンスされました)



AR5001Dの受信周波数が40kHz~3.15GHzで、今回発表された日本版AR6000が9kHz~6GHzですから潜水艦の電波から5.8GHz無線LAN、ETC、気象レーダーの電波までキャッチできると思われ、想像するだけでワクワクします。

オープン価格とのことですが海外では既に40kHzから受信可能なAR6000がだいたい60~70万円くらいで販売されているようです。



パッと見た感じではオプションはAR5001Dと共通。デジタルI/Q出力基板のIQ5001オプションも使用できます。351MHz登録局やデジタル簡易無線の復調ボード関係の製品はまだなさそうですね。





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[関連記事]
AORが今年(2011年)参加する展示会を発表


AOR、AR5001DとAR2300制御ソフト公開

AORからGP5001発表



2013/05/08

八重洲、海外で新モノバンドハンディFT-25x発売か

まずはこちらを御覧ください。


八重洲無線のアメリカ公式サイトでは本記事を書いている現在未発表ですが、海外の情報によると、今月中旬にFT-252(写真左)とFT-257(同右)というモノバンドハンディが発売されるそうです。

どことなくFTH-80(MS80)のゴリラテイストと言いましょうか、昔(90年代後半)の八重洲の2代目ブーマートランシーバー(特定小電力)を彷彿とさせるデザインです。

少々脇道にそれますが、ブーマートランシーバー発売当時のカタログには初代、2代目共にゴリラが描かれていました。恐らくそれが原因でよしおは「ゴツいトランシーバー」=「ゴリラ」の構図ができてしまったのかもしれません。


+ + + + + + + + + + + +


さてゴリラの話はここまでにして、ここからは八重洲(旧バーテックススタンダード)の現行モノバンドハンディ機の(モービル機ではない)FT-270(R)、FT-277(R)と入手した発売予定のFT-252、FT-257のカタログスペックを比較します。


上の表は現行モデルFT-27xシリーズとFT-25xシリーズのカタログからスペック上異なる部分を抜き出したものです。

まず驚いたことはFT-25xシリーズがFT-27xシリーズと比べ通常価格が27%以上お買い得となったことです!

安くなった要因は主に以下が考えられます。
・防水性能をIPX5へ簡素化
・テンキー省略
・音量とダイヤルつまみ独立を統合

バッテリーシステムにリチウムイオンを新規採用したにもかかわらず、コストを27%も抑えることに成功した努力は見事です。



細かい違いをチェックしましょう。

上の表には記載しませんでしたがFT-252はスペック上FT-270(R)と比べ、アマチュアバンド内の受信感度が0.04uV下がりました。テンキーレス化と同時に内部コストダウンを行ったことによる結果かもしれません。それからWiRESII対応の記載がFT-252/257にはありません。

FT-252/257のバッテリーはFNB-124LIという新型リチウムイオンです。従来のFT-27xシリーズ用アクセサリーはほとんどが非互換です。
オプションのE-DC-6がFT-27xとFT-25xで共通なことから、外部入力端子形状はFT-270/277と同じですが動作電圧が10V以下のため12Vシガーライターソケットや13.8V電源との直結は不可のため電圧降下する新オプション(シガーライターアダプタ SDD-11など)を介しての接続となります。

消費電流はFT-270/277と比べ、FT-252/257は増加傾向ですが自動電源オフ後の消費電流はFT-270/277の1/16と、改善が見られます。

トランシーバー本体の大きさはFT-252/257が一回り大きくなっているにもかかわらず重さが110グラムも軽くなっています。新型バッテリー採用による影響が大きいと予想します。

防水性能はFT-252/257では水没不可となりました。値段とのトレードオフですね。

キーパッドのバックライト有無は現状未確認です。

そしてFT-252/257でうたっていますATS(自動トランスポンダーシステム)ですが、FT-270/277などのARTS(自動"レンジ"トランスポンダーシステム、相手と交信可能か確認する機能)とどう異なるのか要調査です。



まとめますと無線機のテンキーレス化、音量つまみとダイヤルつまみの一体化、防水性能の差は好みの分かれるところです。よってFT-252/257はFT-270/277との住み分けができると考えます。

国内での発売はもう少し先か、あるいは発売されないかもしれません。型番から"R"が消えていることも少々気になります。

以上、カタログ情報からアメリカで近日発売予定のFT-252とFT-257が現行モデルFT-270、FT-277とどの程度違うのか読み解きました。

※FT-252, FT-257の画像が事実である場合、上記写真の著作権は八重洲無線に帰属し要請に応じま





 



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2013/05/04

アルインコDJ-X81考察

個人的な事情で約1年ぶりの更新となります。「個人的な事情」を詳しくお知りになりたい方は自己紹介ページでご確認ください。



さて今回は近日発売予定のワンセグ音声受信&緊急放送自動受信機能を搭載した、アルインコのDJ-X81を考察します。

すでにご承知と思いますがアルインコのDJ-X81はカタログスペック上では発売中のDJ-X8と比べ、大きく以下の機能が追加されています。

 ・緊急放送受信(緊急地震速報EEW、津波などの緊急警報放送EWS)
 ・ワンセグ地上デジタルテレビ放送音声受信
 ・プリセット(事前設定)メモリー拡充
 ・その他操作性、メンテナンス性向上
 ・付属充電池が100mAh容量増加(充電時間ほぼ変わらず10時間)


一方DJ-X81唯一と思われる機能減ポイントは一部周波数帯の受信制限です。
(追記:DJ-X8にはある録音機能も省かれています。)


細部の違いを少々見て行きましょう。

DJ-X81は本体が一回り(縦3ミリ、奥行き1ミリ、重さ10グラム)DJ-X8よりも小型化しました。これにより充電スタンドやソフトケースなどがDJ-X8と共用できないようです。

受信感度スペックはDJ-X81DJ-X8は全く同じです。消費電力は以下にまとめましたが10~44ミリアンペアDJ-X81が多いです。おそらく緊急放送のバックグラウンド受信によるものと思われます。



+ + + + + + + + + + + + +



スペック比較はここまでにして、本題である今回DJ-X81が登場した背景を考察します。

DJ-X11は別としてDJ-X8が2006年11月の発売ですからDJ-X81を後継機と考えるとおよそ7年ぶりの同一カテゴリー内の機種追加となります。

DJ-X8が発売されてからこれまで大地震や台風、豪雨そして先日の関西の大地震と、後半は自然災害づくしでした。

そして今回のDJ-X81の登場です。DJ-X8同様消防署や役所、公共交通機関で使われる無線などをほぼカバーすることから、ワンセグテレビ音声受信機としては現時点で最強の情報収集能力を有すると言っても過言ではない“ラジオ”です(2013年5月現在)。

なお、参考までに緊急地震速報(EEW)、緊急警報放送(EWS)、地デジワンセグテレビ音声ラジオの一覧をこちらに作りました。

2012~2013年の間にいかに様々なメーカーがワンセグ対応ラジオや緊急地震速報対応ラジオを世に送り出していることが分かります。


DJ-X81のターゲット層は恐らくこれまでの災害を踏まえ愛好家以外の、受信機になじみのない一般ユーザーを含んでいると思われます。アルインコとしては珍しい一部周波数帯の受信制限はこの一般ユーザーへの配慮と推測できます。




早々にまとめに移ります。

今回発売されるアルインコのDJ-X81はワンセグ音声受信にとどまらず緊急放送を常時受信待機するという、従来の受信機の常識を超えた、特に日頃から防災意識を持つ方のための受信機です。

(ID-31にどことなく似ていなくもないというのは禁句かもしれませんが)デザインもかなり頑張っていると思います。

携帯電話やスマートフォンでもワンセグが受信できるからワンセグ受信ラジオは不要とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。しかし緊急時に携帯電話やスマートフォンの電池残量が貴重であることを考えればDJ-X81のようなラジオの常備は理にかなっていると考えられなくもありません。

よしおも購入しようか、かなり迷っています。
5/22追記:購入しました。詳しくは下の[関連記事]リンク先を参照ください。



(左からDJ-X81、DJ-X8通常版、DJ-X8エアバンド(飛行機無線)版です)



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DJ-X81のEEW&EWSお試し受信

DJ-X81スプリアス調査

【追記】アルインコDJ-X81雑感

【追記】アルインコ DJ-X81開封インプレッション

・緊急地震速報,緊急警報放送,ワンセグ対応ラジオ一覧