2020/04/27

グアムで無線を受信する4~総括~

米国の無線を受信したいが為にグアム旅行するシリーズ。今回は締めくくりとしてグアムでの受信成果とTRX-1の使い勝手を語ります。



まずは受信成果から。
RF Explorer+AR-DV10で移動受信中(一部加工済)

グアムでは概ねアナログの比率が多く、デジタルが思いのほか少ない印象でした。

UHF帯でP25を発見しましたが暗号化されていました。

450MHz帯ではアナログ通信が比較的多く使用されていました。

空港では400MHz帯アナログ波の他、Radio Referenceのデータベースに未掲載のTETRAらしき波を観測しました。AR-DV10でしばらく待機しましたが音声の復調には至っていません。



次に米国でのTRX-1の使い勝手について。
グアムでTRX-1受信中の様子


日本で死蔵状態だった、手持ちのTRX-1の初陣を飾った場所がグアムとなった訳ですが、一言で言うとTRX-1は初心者が苦戦するスキャナーと思いました。その苦労話は下記関連記事にまとめています。

TRX-1では800MHzのトランキングのみ受信に成功しましたが、米ユニデンBCD436HP同様、英語の説明書を読んでも勝手が分かりづらいので、とりあえず触ることが重要でしょう。

ただ、何故かグアムの周波数を郵便番号で地域設定できなくなってしまったBCD436HPに対して、TRX-1はほぼ強制的に地域設定でき、こうしてグアムで活躍した訳ですから、応用性はかなりあると思いました。


AR-DV10RF Explorerも連携してうまく使うことができたと思います。特に海外ではどんな電波が現れるか予想外のことばかりが起こるので、多彩な復調モードに対応するAR-DV10の必要性を改めて実感した次第です。


Whistler(ウィスラー) TRX-1

出発前から冷や汗ばかりでしたが、何とか本場米国の無線を無事受信できて良かったです。

機会があれば、次回はラジオの遠距離受信も試したいですね。

(関連記事はこの下です)


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TETRAのGSSIとは (2020/04/20)

2020/04/20

TETRAのGSSIとは

AORのAR5700DのカタログにGSSIという新たな用語が現れました。このGSSIについてこれから説明します。

AOR AR5700Dカタログの「復調モード」欄から抜粋



■GSSIを理解する前に


突然ですがグループコードという言葉をご存じでしょうか。アマチュア無線経験者ならばおおよそ検討はつくと思います。

グループコードとは、ある無線の電波(チャンネル)で使う、大人数の中から特定の人達でグループを作るための番号です。トーンスケルチやデジタルコードスケルチがこれに当たります。


例えば、スマートフォンのSNSアプリで複数の人へ一斉に連絡するときに「グループ」を作り、「グループ」内で互いに連絡し合った経験があるかと思います。

この「グループ」を作る/作った状態が無線で言うところのグループコードが働いている状態です。


無線機同士でグループを作る場合は、互いに打ち合わせたグループコードを無線機間で合わせると、同じチャンネルを使っている他のグループが居ても彼らの通話が聴こえなくなります。つまり、グループ内だけの通話が可能となります。



■トランキング無線は特定の使用者の通話追従が困難

AOR AR-DV1(上)とAR-DV10(下)

AORの受信機AR-DV1AR-DV10にはTETRAダイレクトモードの他、TETRAトラフィックチャンネルの復調機能が装備されています。

しかしTETRAトラフィックチャンネルでは同じチャンネルを複数のグループ(例えば、A会社、B組織、C警備、D秘密結社...など)が共用できる仕組みのため、特定のグループの通信を追跡することは困難です。

実際のところ、AR-DV1AR-DV10では特定のグループを追跡するTETRA受信はできません(2020年4月現在)。



■GSSIとは


では市販のTETRA無線機はどのようにして異なるチャンネルを把握し、上手に切り替えているのでしょうか。

実は、TETRA無線機はISSIという無線機固有識別IDのようなものと、GSSIという無線機の所属するグループ固有識別IDのようなものを予め無線機の内部に持っています。この「グループ」の意味は、スマートフォンのSNSアプリ上の「グループ」と同じ意味合いと考えれば問題ないはずです。

(本当はもっと複雑な仕組みで動いていますが)TETRA無線機(携帯機)はこれらの識別IDをTETRA基地局とやり取りすることでトラフィックチャンネル(送受信周波数とスロット)間をスムースに渡り歩き、シームレスな通話ができるのです。

つまり、GSSIとはTETRAネットワーク上にある特定のグループを指し示す、グループコードのような働きをする名前(グループ名)といえます。



■AR5700DはGSSI指定が可能...かもしれない


今度(2020年4月下旬に)発売予定のAR5700Dには「GSSI指定によるトランキング対応」と記載の通り、TETRAトラフィックチャンネル上のGSSIをロックオンする機能が装備されているようです。
AR5700D試作機(ハムフェア2019会場)


これまで手作業でスキャンしていた移動先の新たなチャンネル(周波数やスロット)を、AR5700Dを使えば、トラフィックチャンネルに流れている特定のGSSIを指定するだけで、そのグループの通話の自動追従が可能となるはずです。

但しこの追っかけ受信をするためには、事前に受信したい通話のGSSIを知る必要があります。

受信前に特定のGSSIを入手することは、AR5700D単体だけでは不可能なので、現実的には追いかけたい通話をひたすらAR5700Dの前で待ち続け、聞きたい通話がヒットしたらGSSIを手動でロックオンするという、筋金入りの根気が必要でしょう。

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AORのAR5700Dのカタログ考察とAR5001Dとのスペック比較

AORからAR5700Dの発売予告が4月17日に発表されました。今回は発売開始されるAR5700Dの価格、AR5001Dとのスペック比較、気がついたことを取り上げます。


AOR AR5700D(ハムフェア2019会場)


AR5700Dは今月(2020年4月)下旬発売、価格は税抜き36万3千円(10%税込で39万9300円)と、約40万円です。

現行モデルのAR5001Dが10%税込で36万5200円ですから、単純に考えると約3万4千円のアップに見えますが、実はそう単純な話ではありません。

AR5700DにはI/Q出力機能とデジタル復調機能が内蔵されていますが、AR5001Dではどちらもオプションとなっています。

つまり、AR5001DIQ出力ボードIQ5001(10%税込62700円)とP25復調ボードAP5001(10%税込25300円)を追加して、初めてAR5700Dと対等に価格比較できるようになります。

すると、フルオプションを内蔵した現行モデルのAR5001Dは10%税込で453200円と、なんと新発売のAR5700Dよりも54900円高いのです。

しかもAR5001Dのデジタル復調機能はP25フェーズ1のみですから、デジタル復調機能だけ注目すれば、AR5700Dは驚きの破格といえます。



次にAR5001DとAR5700Dのスペック比較表を下記に示します。表の左がAR5001D、右がAR5700Dです(各表はクリックで拡大)。

受信周波数範囲はわずかに伸びています。

デジタル復調モードはAR-DV1AR-DV10と同じようですが2020年4月現在、AR-DV1AR-DV10に搭載されていないTETRAトラフィックチャンネルの追従機能が追加されたように見えます。

受信感度は一概に言えませんが、3GHz帯が改善しているようです。

大きさは変わりません。重さは200グラム重くなっています。

電源周りは最大消費電流が1.5アンペアから2アンペアになりました。専用のACアダプターを付属しているので、普通に使う分には安定化電源は基本不要です。

端子ACC1はオプションのGPSリファレンスレシーバーGP5001を接続可能ですが公式サイトのオプションには挙がっていないようです。

端子ACC2のアンテナ切替器の端子が8PIN DINからRJ-45へ変更されているため、AS5001をご使用中の場合はAS5700への交換が必要です。

AR5001DでオプションだったI/Qソフトウェアは標準添付となりました。
I/QソフトAR-IQ-IIIデモ中のAR5700D試作機(2019年)



この他、カタログから判る範囲でAR5700Dの気づいた点をいくつか挙げていきます。

固定機ならではのRFフィルターは特に2.1~3.7GHzの性能が向上しているようです。
AR5700Dの簡易ブロック図(フィルターに注目)

AR5700DはAR5001Dよりも大型ICが5つ増えました。

カタログによると、大型ICの増加でサーチ速度が毎秒100チャンネル達成をうたっているように見えますが大型ICの少ないアイコムIC-R30のサーチ(プログラムスキャン)速度は毎秒200チャンネル...。


新設計のデジタルデコード基板(下記写真赤丸部分)をよく観察すると、ICの載っていない部分が見えます。

単純にICを載せる前に写真を撮ったのか、民生用には載せられないICがあるのでしょうか。妄想が広がります。


AR5700D試作機(2019年)

このように、AR5700Dはコストパフォーマンスの観点でも機能的に見ても、カタログスペック上は現行モデルAR5001Dよりも良くなっているようです。

値段が下がった主な理由は技術革新と部品価格の低下と思われます。

ハムフェア2017の初登場から3年経過し、ようやく発売の迫ったAR5700D。果たして"あの"機能はついてくるのか、AR-DV1やAR-DV10との復調差はどんなものか。楽しみは尽きません。

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