2014/06/25

ユピテル MVT-9000MKII

MVT-9000シリーズはゴルフナビやGPSレーダー探知機、ドライブレコーダーで有名なユピテルからリリースされていたハイエンド広帯域受信機です。



MVT-9000シリーズのデザインはハンディ受信機史上最も優れていると思います。
特にスピーカーから液晶に至るまでのなだらかなS字カーブ、テンキー付近を大胆にカットしアクセントをつけた楕円のくぼみはヨーロピアンデザインスピリッツに通じるのではないかと言えるほどの優雅さを兼ね備えています。

実際ユピテルの受信機はMVT-7100、MVT-9000、MVT-9000MKIIを筆頭に欧州を中心として輸出されていたようで、確かに使い勝手やデザインに賞賛する声がありますからあながち間違いではなさそうです。デザイナー、エンジニア集団は本当に優秀と思います。



MVT-9000MKIIの上面はオーソドックスなスケルチ、ボリューム、ダイヤルが独立して並び、アンテナ端子はワンタッチで着脱可能なBNCコネクタです。

各ノブの間はMVT-7100とほぼ同じですがツマミの形状に傾斜がなくなったこともあり指を入れる隙間は狭まっています。しかし操作のコツを掴めば特に気になりません。


バッテリーは当時主流の単3電池4本。リチウムイオン電池に慣れたスマホユーザーには信じられない構成と思います。


大きさは名機MVT-7100と同等。ただしMVT-9000MKIIのほうがヘビーウェイトです。


持ち運びにはやや大きいと思うアルインコのDJ-X81と比べても圧倒的な存在感.....。


八重洲無線(旧バーテックススタンダード) のVX-3/VR-160と厚みを比べるとなんとおよそ1.5倍。かといってメタボリックでもなく全体に大きいためプロポーションは良好です。

小型受信機登場以前はこのサイズが当たり前でしたから個人的に持ち運びの印象は悪くはありません。そもそもこのサイズはアイコムのIC-R20やエーオーアールのAR8200シリーズ、アルインコのDJ-X2000と同等ですから驚くほどでもないと思います。



使ってみた感想(レビュー)をいくつか。

操作はユピテルのレシーバーを使われたことのある方ならばしっくりくるでしょう。比較的機能は豊富ですが小型機にありがちなセットモードのようにメニューが階層化されていないので分かりやすいです。

受信感度は総じてMVT-7100とほぼ同等。1.7GHz~2GHzの感度は2.1GHz帯の携帯電話や無線LANが本格的に登場する以前の製品としては良く出来ています。内部スプリアスはIC-R6にはかないませんがDJ-X81やMVT-7100よりも少なくVR-160とほぼ同等かやや少なめでしょうか。

サーチ・スキャンスピードもMVT-7100とほとんど変わりません。

バックライトは明るくきらびやかです。連続点灯のほかパワーセーブを入れると一定時間経過後消灯しキー操作直後、再び光り出す設定も可能です。

音質ですが無線、ラジオを問わず耳が疲れにくく、とにかく聴きやすいサウンドを再生します。

スピーカー位置が同じく本体上側にあるエーオーアールの傑作AR8000はWFMの再生で高音にキーンという音がわずかにしますがAM、NFMではそれが目立たずMVT-9000MK2と同じような音質と思いますからもしかするとスピーカーの位置がヌケの良い音を出す秘密の一つかもしれません。

MVT-7100と比べますとMVT-9000MKIIのほうが僅差ですが少しだけクリアで好みの音です。列車無線も思わず声に出してしまうほど聴きやすいです。空線キャンセラーを外付けしてでも使用する価値はありますね。航空無線受信中のバックノイズの少なさ、交信終了直後のスマートな切れ味もさすがユピテルといったところです。

玄人向きの機能ですがスクランブル解読機能はキャリア漏れが聴感上皆無です。操作体系に慣れればかなり実用的です。



最新のID-51と比べ多少色あせるものの大型液晶を装備。デザインもさることながら音質・感度ともに申し分なし。

90年代後半の当時はAR8000も実装していなかった音声受信中のリアルタイムバンドスコープを搭載し、2GHz超えの受信を可能とするMVT-9000シリーズ。無線のほとんどがアナログからデジタルへとシフトする激動の今だからこそ持っておきたい1台と言えるでしょう。

ご存知のようにユピテルは2014年2月を最後に広帯域受信機の開発を終了したそうです。最後の製品となるMVT-7500は7200までのシリーズと比べ基本性能が異なるとのことで次に登場するであろうデジタル復調機能受信機を期待していただけに残念です。他メーカーの追随を許さない独自のこだわりを持つユピテルのレシーバー製造中止が惜しいと思うのは私だけではないはずです。

受注生産でも構わないですからせめてかつてのVT-125/VT-225のように、独特の音質を奏でるエアバンド受信専用機だけでもいつか再び登場させてほしいものです。もちろんソニーのAIR-7のように長波~短波も受信可能な機種でも大歓迎です。

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