AOR AR5700Dカタログの「復調モード」欄から抜粋 |
■GSSIを理解する前に
突然ですがグループコードという言葉をご存じでしょうか。アマチュア無線経験者ならばおおよそ検討はつくと思います。
グループコードとは、ある無線の電波(チャンネル)で使う、大人数の中から特定の人達でグループを作るための番号です。トーンスケルチやデジタルコードスケルチがこれに当たります。
例えば、スマートフォンのSNSアプリで複数の人へ一斉に連絡するときに「グループ」を作り、「グループ」内で互いに連絡し合った経験があるかと思います。
この「グループ」を作る/作った状態が無線で言うところのグループコードが働いている状態です。
無線機同士でグループを作る場合は、互いに打ち合わせたグループコードを無線機間で合わせると、同じチャンネルを使っている他のグループが居ても彼らの通話が聴こえなくなります。つまり、グループ内だけの通話が可能となります。
■トランキング無線は特定の使用者の通話追従が困難
AOR AR-DV1(上)とAR-DV10(下) |
AORの受信機AR-DV1とAR-DV10にはTETRAダイレクトモードの他、TETRAトラフィックチャンネルの復調機能が装備されています。
しかしTETRAトラフィックチャンネルでは同じチャンネルを複数のグループ(例えば、A会社、B組織、C警備、D秘密結社...など)が共用できる仕組みのため、特定のグループの通信を追跡することは困難です。
実際のところ、AR-DV1とAR-DV10では特定のグループを追跡するTETRA受信はできません(2020年4月現在)。
■GSSIとは
では市販のTETRA無線機はどのようにして異なるチャンネルを把握し、上手に切り替えているのでしょうか。
実は、TETRA無線機はISSIという無線機固有識別IDのようなものと、GSSIという無線機の所属するグループ固有識別IDのようなものを予め無線機の内部に持っています。この「グループ」の意味は、スマートフォンのSNSアプリ上の「グループ」と同じ意味合いと考えれば問題ないはずです。
(本当はもっと複雑な仕組みで動いていますが)TETRA無線機(携帯機)はこれらの識別IDをTETRA基地局とやり取りすることでトラフィックチャンネル(送受信周波数とスロット)間をスムースに渡り歩き、シームレスな通話ができるのです。
つまり、GSSIとはTETRAネットワーク上にある特定のグループを指し示す、グループコードのような働きをする名前(グループ名)といえます。
■AR5700DはGSSI指定が可能...かもしれない
今度(2020年4月下旬に)発売予定のAR5700Dには「GSSI指定によるトランキング対応」と記載の通り、TETRAトラフィックチャンネル上のGSSIをロックオンする機能が装備されているようです。
AR5700D試作機(ハムフェア2019会場) |
これまで手作業でスキャンしていた移動先の新たなチャンネル(周波数やスロット)を、AR5700Dを使えば、トラフィックチャンネルに流れている特定のGSSIを指定するだけで、そのグループの通話の自動追従が可能となるはずです。
但しこの追っかけ受信をするためには、事前に受信したい通話のGSSIを知る必要があります。
受信前に特定のGSSIを入手することは、AR5700D単体だけでは不可能なので、現実的には追いかけたい通話をひたすらAR5700Dの前で待ち続け、聞きたい通話がヒットしたらGSSIを手動でロックオンするという、筋金入りの根気が必要でしょう。
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