2020/05/09

BCD436HPのDMRトランキング受信までの手順

国内で使用されているDMRトランキング無線を米ユニデンBCD436HPで受信するまでのセットアップ手順を説明します。DMRの追加オプションをBCD436HPと同時購入していない場合は別途アクティベーションが必要です(北米で購入可能)。
米ユニデン BCD436HPの北米動作デモ

その前におさらいですがBCD436HPは北米地域限定の米ユニデン製スキャナーです。
スキャナーとは一般的な広帯域受信機と異なり、メモリースキャンを主として使います。

BCD436HPには付近の強い電波に瞬間同調するクロースコール機能、トーンスケルチ/DCSの高速解読、周波数使用統計を取得するディスカバリー機能、受信音声だけでなく受信周波数やトーン/DCS等も同時記録する強力な録音機能、メモリーバンクを意識しなくても良い内部メモリー、単3充電池駆動&USB充電、航空無線を含むAMモードの音質の聞きやすさといった、トランキング無線を受信しなくても楽しめる様々なメリットがあります。

ただしBCD436HPは海外からの入手が必要です。
また説明書や操作、表示がすべて英語です。日本のユニデンではBCD436HPを含むスキャナー製品はノーサポートなので注意してください。



前置きはここまでにして本題に入ります。BCD436HPを使用したDMRトランキング無線の受信前セットアップ手順は次の通りです:

(1)DMRトランキング無線の周波数を探す

(2)DMRの種類を調べる

(3)SentinelでDMRの種類と周波数をメモリーする

(4)DMRトランキング周波数の使用数を確認する

(5)LCNを特定する

(6)受信開始



これからDMRトランキング無線の、受信に至るまでの詳しい手順を説明します。

事前にDMRをアクティベーションしたBCD436HPとSentinelソフトウェア(BCD436HP内蔵のマイクロSDカード内に同梱)をインストールしたパソコン、単3電池3本、DMRを復調可能な受信電波環境を準備してください。


(1)DMRトランキング無線の周波数を探す

最初の難関です。総務省のHP周波数手帳ワイド周波数手帳アプリ等でDMRトランキング無線のMCA周波数を調べます。



(2)DMRの種類を調べる

次に、(1)で調べた周波数をBCD436HPで実際にサーチしDMRの種別を確認します。

BCD436HPで電波をサーチする方法は「ユニデン受信機完全操作ガイド」、またはラジオライフ2015年8月号のBCD436HPサーチバンド登録方法を参照ください。

サーチには時間が掛かるのでBCD436HPをサーチ状態でしばらく放置します。

BCD436HPをしばらく放置後、REPLAYキーを押すと過去に受信した電波が音声や受信状態と共に再生できます。

このとき右下に表示された”DMR”又は”CAP”の文字がどちらであったかを必ず覚えておいてください。両方表示される場合は”CAP”を覚えておきます。

もし何も受信できなかったり”DMR”又は”CAP”が全く表示されない場合は受信場所を変えます。

これでDMRの種類の確認は終わりです。BCD436HPの電源を切り、マイクロSDカードをパソコンへ差し込みます。




(3)SentinelでDMRの種類と周波数をメモリーする

パソコン上でBCD436HPのメモリー編集ソフトSentinelを開き、Edit → Edit Favorite Listをクリックします。
ここではFavorite Listを新規作成するため、「New Favorite List」をクリックし名前を”DMRtest”と入力しました。


次に、先ほど新規作成した”DMRtest”のFavorite List上にSystemを作成します。ここではSystem Nameを”DMRtrunk”としています。


System Typeは(2)で実際に受信したDMRの種類に応じた設定が必要です。
・”DMR”表示→DMR One Frequency
・”CAP”表示→MotoTRBO Trunk

この例では今後"CAP"が表示された想定で話を進めます。

Create New SystemウィンドウでOK後、左のDMRtrunkをクリックしOptionsタブを起こしID:SearchをOnにします。

Sitesタブ内の「+」を1クリックしSiteを追加します(名前は自動で付きますが変更も可能)。例は”Site 0000”としています。

左のSite 0000をクリックしOptionsタブのModulationをNFMにします。






(2)でDMRの種類が分からなかったり受信が不安定の場合はDigital Threshold Levelを下げるとわずかに受信が改善する場合があります。


 Frequencyタブを起こし、(1)で調べたDMRトランキング無線の周波数を入力します。
 (2)で"DMR"が表示された場合は入力する周波数は1Siteに対して1つが良いでしょう。下図は"CAP"が表示された2周波数をこれから入力する例を示しています。

File → Save後、File → ExitでFavorites List Editorを閉じます。

最後にBCD436HPのマイクロSDカードをパソコンに取り付けScanner → Write Scannerをクリック。後は全部OKで書き込みは完了です。

マイクロSDカードをBCD436HPへ差し込みBCD436HPの電源を入れなおします。



(4)DMRトランキング周波数の使用数を確認する

BCD436HPに内蔵されたSystem Status機能を使い、DMRトランキング無線の使用電波の数を確認します。この確認は必須ではないため、手順を飛ばしても構いません。

左側面のMENUキーでMENU画面を表示し、Analyze → System StatusのInput System Nameでダイヤルを回し”D”を選んだ後、ダイヤルをプッシュします。

(3)で書き込んだシステム名をダイヤルで選びEキーを押します。

Select SiteでSite 0000を選びEキーを押します。

System Statusが表示開始されます。
表示された「Freqs:」がトランキング無線で使われている実際の周波数の数です。
下の例は1周波数のみ使用していることを表しています。

実際に使用されている電波の数が期待していた数と異なる場合、(3)でメモリーした周波数をもう少し吟味してもよいでしょう。



(5)LCNを特定する

複数の電波(周波数)を使ったDMRトランキング無線にはLCNの特定が必要です。

BCD436HPにはLCNを自動的に特定するLCN Finder機能がありますのでこれを使います。

このLCN Finder機能はDMRだけでなく、今回説明していないLTRにも有効です。

LTRについての説明はyamanekosukeさんのこちらの記事が参考になります(リンク許諾済)。LTRでLCNがうまく動作せず受信に苦労する場合はこのLCN Finder機能を試してください。


左側面のMENUキーでMENU画面を表示し、Analyze → LCN FinderのInput System Nameでダイヤルを回し”D”を選んだ後、ダイヤルをプッシュします(LCN Finder選択後は途中までSystem Statusと同じ操作です)。

(3)で書き込んだシステム名をダイヤルで選びEキーを押します。

Select SiteでSite 0000を選びEキーを押します。

するとLCNの自動特定が始まります。LCNの特定には時間が掛かりますから気長に待ちましょう。

LCNの全特定が完了すると、特定したLCNを保存するか確認の画面が出るのでEキーを押し結果を保存します。

LCN特定を途中で終了する場合は左側面のMENUキーを押した直後Systemキーを押すと、LCNを保存するか尋ねる画面が出るので、Eキーを押します(上図は2波中1波LCNを特定後途中で終了する場合の例です)。

これでLCNの特定が終わりました。

パソコン上でSentinelソフトを起動してBCD436HPのデータを読み込ませると、LCN Finderで特定したLCNは0以外になっているのが分かります。

1周波数のみLCNが欠けている(0のまま)場合は手動でLCNを補完入力し、BCD436HPへ書き戻してもよいでしょう。



(6)受信開始

BCD436HP左側面のMENUキーを押し、MenuからSelect Lists to Monitorを選択します。その後、DMRtestをONにして、Sentinelソフトウェアで登録したDMRトランキング無線を受信できるようにし(下図)、最後にSYSTEMキーを押します。

これでDMRトランキング無線の受信が開始されます。受信が成功するとUIDやTGIDが表示されるようになります。S1、S2はスロット番号です(下の例ではS2が辛うじて見えます)。




以上でBCD436HPを使ったDMRトランキング無線の受信前セットアップは終わりです。これで即DMRトランキング無線の受信を始められるはずです。





このようにBCD436HPはトランキング無線の受信に便利なスキャナーです。日本の広帯域受信機でトランキング無線の受信を充分楽しめる機種は2020年5月現在、AOR AR5700DのTETRA GSSI選択受信を除き存在しません。

お手持ちのスキャナーのトランキング受信機能を有効に活用すれば、広帯域受信機では味わえない更なる変態の領域を楽しむことができるはずです。

(関連記事はこの下です)


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