ELPA(朝日電器) ER-C57WR
ER-C57WRは2014年10月からELPAブランドで朝日電器から発表され、現在(2016年3月現在)発売されている高機能ラジオです。
通常のAMラジオ放送とFMラジオ放送、FM補完放送の他、世界で使用されている長波やラジオNIKKEI、NHKの海外放送などが放送されている短波、そして飛行機の会話に使われる航空無線(エアバンド)が聴ける、むしろ"受信機"と言うべき多機能を備えたラジオです。
単3乾電池2本または単3充電池2本で駆動し、商品説明によると新品のアルカリ乾電池を使うと連続で3日程度鳴らし続ける実力を備えているそうです。
早速各部を見ていきましょう。
●外観
大きさは幅12.8センチ、高さ7.8センチ、厚み最大3.2センチ。重さは電池込みで約226グラムと、市販のスマートフォンと比べ同程度か若干重いです。
本体正面にスピーカーと液晶表示窓、操作ボタンがあります。電源、ロック、テンキーと周波数の上下(選局ボタン)、FMステレオ/モノラル切替兼AM帯域幅切替、ページ(メモリーバンク切り替え)、周波数ステップ、バンド切り替えの各キーが装備されています。
液晶表示窓内部には購入当初から小さなチリが入っていました(写真赤丸中央の白い点)。
液晶画面の数字表示の大きさは横幅が4ミリ、縦は9ミリと大型です。ボタンや選局ダイヤルを操作すると橙(アンバー)色のバックライトも点灯します。
左側面にはステレオヘッドホン、DC4.5ボルト入力が、右側面には選局ダイヤルと音量ツマミがあります。
背面には短波とFMラジオ、航空無線(エアバンド)受信用のロッドアンテナ、単3電池2本を収納する電池蓋があります。ロッドアンテナ長は実測で最短で10.2センチ、最長48.5センチです。
ロッドアンテナ根元の塗装の剥げは開封時についていました(下の写真、赤枠内)。
ロッドアンテナ本体にも入手当初からついている小キズがまばらに見えます。入手当初鉱物オイルのようなものがアンテナエレメントに付着していましたが使用している間に気にならなくなりました。
底面にはリセットスイッチがあります。
全体的に外装のプラスチックは継ぎ目が波打っているように見えます。
●受信範囲
カタログ通りの受信周波数範囲を確認しました。
長波:153-279kHz, 3/1kHzステップ
AMラジオ:522-1620kHz, 9k/1kHzステップ or 520-1710kHz, 10k/1kHzステップ
短波:2300-26100kHz, 5k/1kHzステップ
FMラジオ:76-108MHz(FM補完放送対応), 100k/10kHzステップ
エアバンド:118.000-137.000MHz(25kHz, 5k/1kHzステップ)
各周波数ステップは選局ダイヤルのプッシュで切り替えられます。
SSBや同期検波はありません。
AMラジオの周波数拡張は電源切状態で0(9/10kHz)ボタンを長押しする度に変更できますがこのときFMラジオも自動的に海外仕様(87-108MHz)となります。
エアバンド受信時には選局ダイヤルを回す、または上下選局ボタン押す場合は5kHz or 1kHzステップ。スキャン時は選局ダイヤルのプッシュ切替によらず25kHz固定となります。
●操作性
テンキーの反応は押したときのボタンの凹み具合が数字によってまちまちですから数字に応じて押し方を変える必要があります。またテンキーは携帯電話や有名メーカー製の短波ラジオのように素早く押してもボタンは反応せず、加えてボタンを離したときに反応するので人によっては動作がもっさりしているという印象を受けるようです。
選局ダイヤルはパソコンのマウスのホイールのようにカリカリっとした操作感です。高速で回転させると周波数はちゃんと追いついてきますがFMラジオ以外は操作中に受信音は出ませんので、選局ノブを回しながら放送局を探すのが好きな方は注意されると良いでしょう。
選局ダイヤルの操作ノイズは図書館内で勢いよく回すと隣の方が気付く程度。かなり静かです。
操作ボタンのタッチノイズは選局ダイヤルを回す以上にポツ音が出ます。図書館内で連打すると周囲の方から睨まれる程度。普通です。0~9のテンキーはそれぞれ押し具合がまばらなためタッチノイズの大きさがボタンによって違います。よしお所有の個体では数字の8キーが最もへこんでいるため一番押しづらく、最もタッチ音が小さいです。
●受信感度
もはや世界標準となっているソニー製ワールドバンドレシーバーICF-SW7600GRを基準に比較します。外部アンテナは使用せず本体のロッドアンテナでの比較です。
長波は並、中波(AMラジオ)放送はほぼ互角レベル。なかなか健闘していると思います。
短波は並以下ですが外部アンテナをつけると高感度となります。Sメーターは触れていても音が聞き取りづらい状況が比較的見受けられました。S/Nがあまり良くないようです。帯域幅をナローに切り替えると若干改善します。
外部アンテナをつけなくても2.3~10MHz程度までは近隣のV-Highマルチメディア放送らしき「ジャージャー」というカブリを受けます。
FMラジオ放送は並です。76.4MHzで229MHz帯のGPS基準局のカブリがありました。基準局送信所から1キロに満たないエリアでの使用のため仕方ないかもしれません。
名刺サイズラジオのようにヘッドホンを接続してもヘッドホンのコードはアンテナとしての機能を果たしません。
航空無線は比較的感度が良いと言われている八重洲無線の受信機VR-160とラジオライフの航空無線受信用アンテナRL-AIR twin 、 AORのバンドパスフィルターABF128-SMAの組み合わせと比較しました。スケルチ(雑音消去)レベルはER-C57WRとVR-160どちらも1に設定しています。
結果、VR-160がわずかに優勢となりました。
市販のロッドアンテナをVR-160に取り付けたものとER-C57WRを比べるとVR-160がV-Highマルチメディア放送のカブリを受け、AB128-SMAエアバンドフィルターを間に追加してもER-C57WRに軍配が上がるため上記の組み合わせとしています。
この結果からER-C57WRのエアバンド受信性能は高感度と判断します。
●音質
長波から短波までの受信音は帯域幅をワイドにすると番組によっては人の声の「さ」「た」行の発音がはっきり聞けるほどクリアです。今のところビートなど帯域幅がワイドによる弊害には遭遇していません。
帯域幅をナローにすると市販のAMラジオと同等かわずかに高音が伸びます。電波が弱いときは音割れが発生しているように聞こえます。
エアバンド受信中も帯域幅を切り替えられます。
FMラジオの音質はヘッドホン端子を使うとウォークマンやラジオレコーダーに内蔵されたFMラジオとそん色のないレベルです。聴感上ミニコンポ内蔵のラジオよりも低音が少ない程度でしょうか。
本体スピーカーの音質は市販の小型ポータブルラジオと同レベルでクセはありません。現在受信中の放送局がFMなのかそれ以外かわかります。
●その他
スキャン速度はエアバンドを除き、ソニーのワールドバンドレシーバーの倍以上は出ています。長波、中波、短波いずれも目測で毎秒10~15ステップ程度でしょうか。FMは目測で毎秒100ステップ程度と超高速。対して、エアバンドのスキャン速度は毎秒約3ステップと激遅です。
短波のスキャンは放送バンド範囲内のみを横断する方式のため、放送バンド外の周波数を受信中にスキャンを開始すると自動的に次の放送メーターバンドに移動しスキャンを続けます。つまり放送メーターバンド以外はスキャンしないということです。
メモリーチャンネル数は長波、中波、短波、FM、エアバンドともに各100チャンネル、合計500チャンネルと大容量です。メモリースキャン機能はないようです。
スキャン中に受信した周波数を自動保存するATS機能が搭載されています。
エアバンド受信ではスケルチを入れておくと交信の最初1~2秒が毎回途切れます。本格的な受信には不向きですが、航空無線の臨場感を味わう程度のニーズには応えていると思います。
時計機能、指定時間に電源がONとなるアラーム機能やスリープタイマーもあります。電池を外し30秒以上経過すると現在時刻はリセットされますがプリセットメモリーデータや電源を切る直前の状態は電池を外しても保持されました。
●まとめ
ER-C57WRはコンパクトながら長波から短波、FMラジオに加え航空無線も聞けるワールドバンドラジオです。個体差はあるでしょうが受信感度は上級機に匹敵するほどの性能を有していました。
操作性や本体の造りに上級機ほどの高級感はありませんが、時計や目覚まし機能があり、持ち運びが楽なので旅のお供などに1台あって損はないラジオと思います。
(関連記事はこの下です)
[関連記事]
・ソニー ICF-SW07生産終了(2016/03/05)
大変参考になりました。ありがとうございます。
返信削除お礼ありがとうございます。
削除補足ですがこの機種は1年使用するとボリュームの接触が悪くなりバリバリ音がし始めることがあります。この症状は同時期に入手したソニー製短波ラジオでは起こっていません。それ以外の不具合はありませんが結局のところ値段相応ということです。ご参考にされてください。
詳しくてわかりやすい説明をありがとうございました。
返信削除買うことにします。
エアバンドを聞くため外部アンテナに接続する場合は、ロッドアンテナにアンテナ線を接続すればいいのでしょうか?
こんにちは。ご質問ありがとうございます。
削除ER-C57WRは格安品ゆえアンテナ端子がないので、おっしゃるとおりロッドアンテナへ、お手持ちのアンテナから伸びる同軸ケーブルの線の芯部分を伸ばす加工をするなどして芯の線をアンテナへ巻き付けると良いでしょう。
効果は受信環境、アンテナ、ご使用のケーブル、つなぎ方などで差が出ますので、期待するほどの結果にならないかもしれません。その辺りも実験して楽しまれると良いと思います。