アルインコ DJ-R20D(左), DJ-R100DL(中央), DJ-R200DL(右) |
本題へ入る前におさらいから。
ハイエンドの特定小電力(以下、特小)トランシーバーの定義はおおよそ以下でしょう。
- 電話のように会話できる同時通話に対応
- 通話距離を伸ばす中継器(レピーター)と通信ができる
- トランシーバー自身が中継器にもなる
特に上記の自身が中継器になるメリットがあるため、ハイエンド特小は業務用途で現場の臨時特設中継器として重宝されているようです。
2018年現在の各社の特小トランシーバーの最新ハイエンドモデルは
です。エフ・アール・シーのFC-B47は値段だけで選ぶならこの対象となります。
そして数ある競合機種で未だ人気の機種が生産終了したアルインコのDJ-R20Dです。
アルインコ DJ-R20D |
DJ-R20Dの人気の理由は、ずば抜けた受信性能とコストパフォーマンスと言われています。
しかしそれ以外に人気となる理由はあるのでしょうか。
さっそくDJ-R20Dと現行モデルDJ-R100D、DJ-R200Dを表にして比較しました。なお下記の比較表はいずれもクリックで拡大します。
■大きさと重さ、送受信性能のスペック比較
アンテナの長さはロングアンテナモデルを比べると進化する度に短くなっています。
受信感度は一見DJ-R20Dが劣っているように見えます。しかし実際は、スケルチ解除如何にかかわらず、DJ-R20Dの受信性能がDJ-R100DLやDJ-R200DLよりもワンランク上です。これはメーカーのスペック表からは確認できません。
DJ-R200DにはDJ-R20DとDJ-R100Dにはない電波形式FSKと制御チャンネル送受信、DCSが追加されています。これは中継器リモコン(後述の拡張セットモード参照)などが理由でしょう。
またDJ-R200Dの受信方式は従来のダブルスーパーヘテロダインからダイレクト・コンバージョンとなりました。
■電源、消費電流、音声出力、使用温度
DJ-R20Dの電池は単3アルカリ乾電池3本または専用ニッケル水素充電池パックでした。DJ-R100Dでは単3アルカリ乾電池2本と専用の単3ニッケル水素充電池2本に加え専用リチウムイオン充電池が使用できます。各充電池はどちらも本体内充電池が可能です。
アルインコ DJ-R100D |
DJ-R200Dは単3アルカリ乾電池2本と専用リチウムイオン充電池のみ使用でき、オプションの専用ニッケル水素充電池の使用は正式対応しません。専用ニッケル水素充電池の本体内充電機能もありません。
音声出力はDJ-R200DがDJ-R20Dの4倍、DJ-R100Dの2倍大音量となっており、現場での使用がより快適になります。
外部電源の違いもあります。DJ-R20Dでサポートされていたカーバッテリー電圧の直接接続がDJ-R100DとDJ-R200Dではオプションを介する接続に変更されました。
■通話モード
少なくともDJ-R20Dにある通話モードはDJ-R100Dでフルカバーされています。2018年時点で最新機種のDJ-R200Dはベビーモニターとして使えるケアモニター、クロスTSQ、ビーコンが削除され、代わりに中継器リモコン、ショックセンサー、交互通話短縮モードと同時通話短縮モードが追加されています。
クロスTSQは中継子機モードで代用できるはずなので廃止されても問題はないと考えますが、よしお個人としてはそれ以外のマニアックな通信モードもDJ-R200Dへ継承して欲しかったです。
■機能
主にセットモード以外の機能比較です。DJ-R20Dにある機能はDJ-R100Dにもあります。
DJ-R200Dへ引き継がれなかった機能はDIPスイッチによるモード固定だけです。
アルインコ DJ-R200D |
受信音声録音再生機能はDJ-R200Dのみ対応します。
■セットモード
こちらは標準のセットモードです。
DJ-R20Dにはあり、DJ-R100DとDJ-R200Dにはないセットモードはありません。
表中の「操作時ビープorガイダンスサウンド」はDJ-R200Dには必要ですが、DJ-R20Dはビープ音のみであり「操作ビープorガイダンス音量」で「切」を設定できるので実質不要です。
違いを強いて挙げるならば通話モードとSメーターの液晶同時表示でしょう。
次に拡張セットモードの比較表です。
DJ-R200DはDJ-R100D比で拡張モードを含めセットモードの項目が2倍以上増大しています。
この中にはチャンネル表示をアイコム仕様にできたり、DJ-R200D自体を中継器として使う場合の、他メーカーの特小無線機との交信に憂慮したと思われる接続調整用タイミング変更パラメーターもあります。
これはアルインコが正式に他メーカーの無線機と組み合わせて100%使用できると言っている訳ではありませんが、痒いところに手の届く配慮として好意的に受け取れます。
他にもアルインコの中級クラスの最新機種DJ-P222シリーズ、DJ-CH271、DJ-CH201に搭載されているテールノイズキャンセラーのオンオフもできるなど、DJ-R200Dのセットモードは使い尽くせないほどの手の込みようです。
■まとめ
DJ-R20D(左), DJ-R100DL(中央), DJ-R200DL(右) |
以上から、DJ-R20Dはスペック比較だけならば機能、性能ともにほぼ後継機より見劣りすることは否めません。しかしDJ-R20Dは最新機種DJ-R200D発売の20年ほど前に登場した機種であることも忘れてはなりません。
それでもDJ-R20Dの良いところは以下でしょう。
- アルインコの特小ではトップクラスのアンテナ長
- カタログスペックに現れない受信感度
- 他機種より浅く設定できるスケルチレベル
- 幅広く使える外部電源電圧
- モードとSメーターの同時表示
- 良質なコストパフォーマンス
乾電池が3本必要で、スキャンやチャンネルメモリー、オプション充電池の本体内充電が不可など最新機種と見劣りする面はありますが、上記メリットがあることから未だに重宝されているのかもしれません。
それにしてもDJ-R20Dの受信性能と肩を並べられる特小無線機がはもう作れないのでしょうか…。
(関連記事はこの下です)
[関連記事]
・アルインコ DJ-R200D入手直後のファーストインプレッション (2016/12/17)
・アルインコDJ-P222Lファーストインプレッション (2015/11/01)
・アイコム特小トランシーバー IC-4188Dレビュー (2014/02/17)
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