アメリカFCCがTETRA規格のアメリカ国内参入要件緩和のため、自身の定める90条の緩和を検討していることを発表しました。その報道資料は下記です。
・Amendment of Part 90 Rules to Permit Terrestrial Trunked Radio Technology(pdf、英文)
この文章の内容を大雑把に要約しますと今回FCCはTETRA規格を持つ無線システムをアメリカ国内への普及をしやすくするため、90条要件緩和案を検討しそのパブリックコメントを募集しているとのことです。TETRAについては当記事で過去に触れていますのでそちら(本記事末尾の「関連記事」)を参照いただくとして、簡単に説明しますとTETRAとは25kHzの帯域に最大4つのスロットを使うことができる無線規格の一つです。
TETRAはすでにアメリカ国内で現在僅かながら普及しているようですがその範囲は限定的で現状端末の送信出力も最大1Wに制限されているようです。FCCが90条を緩和しTETRA規格の無線システムがこれまで以上にアメリカ国内に普及するとどうなるのかが我々にとって一番関心のある内容と思いますのでそれを踏まえこのFCCの報道資料をひも解いていくことにしましょう。
まず上記報道資料の要旨をおおまかに抜粋しますと
・TETRA側は450-470MHzの商用バンドと806-849MHz, 851-894MHzのESMRバンドへの参入を検討、要求している
・TETRA側はパブリック・セーフティへの参入を検討していない
・FCCはTETRA規格の無線システムをパブリック・セーフティへ導入することを検討している
・FCCは既存のAPCO P25とTETRA、それ以外のシステムの相互接続の可能性を模索している
となると思います。ここでなぜFCCが定める90条緩和が必要となるのかというのは勘の鋭い方はお察しのとおり、TETRA規格の無線システムは1スロットを使っても25kHzの帯域を占有する事実とFCCが2013年1月にナローバンド化を完了する事実が矛盾することにあります。
アメリカのナローバンド化(詳細は本記事最後の「関連記事」を参照)は2013年1月にほぼすべての周波数帯域で1波辺りの占有周波数帯域を12.5kHz以下(実際の要件は11.25kHz以下)を義務付けるというものです。しかしTETRAの規格はスロットを1つ使ったとしても4つ使ったとしても占有周波数帯域は25kHzとなり、FCCのナローバンド化の基準に適合しなくなると判断できます。これに関連すると思われる、“TETRAシステムを運用した場合、周辺の帯域(電波)干渉による影響が心配される”旨が上記報道資料では繰り返し記載されています。
今回FCCは上記報道資料にあるとおり、この電波干渉問題をどのように説明すればTETRAが採用できるのかを中心にパブリックコメントを求めています。言い換えるとFCCはTETRA規格の無線システム導入を積極的に検討しているということです。
なぜdPMRやNEXEDGE(IDAS)などの1波辺り6.25kHzの帯域占有で済む規格ではなくTETRAを検討するのかについてはアメリカ国内でもさまざまな憶測が飛び交っています。せっかくAPCO P25規格を制定し運用開始しはじめたばかりなのになぜ既存の規格を追加で組み込もうとするのか、その真意があまりにも理解しにくいのは誰もが思うところでしょう。
現時点でFCCがこのTETRA普及拡大へのパブリックコメントを募集している状況からTETRA側の要求が通る可能性はきわめて高いと言えます。このアメリカのTETRAシステムの普及が日本国内のインフラへすぐに影響することは考えにくいですがアメリカ国内でのTETRA規格の普及推進がそれ以外の規格の普及を妨げる要因となることは否定できないと言えます。
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[関連記事]
・TETRAとは・・・
・米FCC、VHF/UHFのナローバンド化を義務付け
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